ハンティングトンとミアシャイマー
90年代、「文明の衝突」で文化的紐帯の重要性を論じたハンティングトンは、人類の争いを国家間レベルで語るミアシャイマーのようなリアリストの立場と距離をとり、文明上で重なるウクライナとロシアが戦争することはないと書きました。
それから四半世紀、少なくともウクライナに関してはミアシャイマーが正しかったことが証明されました。
名著、文明の衝突ですら、将来の予想を見誤る。真の保守的日本人がとるべき姿勢とは、識者の評判の良さから自ら考えずハンティングトンを絶賛するのではなく、何度も読んで評論すること。当方が読んだ限り、アメリカにはびこる西欧普遍主義を否定した「文明の衝突」の目的はアメリカを否定することでも何でもなく、西欧文明のリーダーであるアメリカの覇権を少しでも長引かせるため、認識の幅を広げるべきだと警鐘を鳴らすもの。彼は西欧文明の優位を長引かせるために重要な8点を挙げていますが、その一つが「日本が西欧から離れて中国との和解に向かうことを少しでも遅らせること」とはっきり書いています。
私が読んでいるのですから政府関係者の多くは同書を読んでいるはず。つまり、こんなところからも、戦後の日本はずっとアメリカの妾であることを自ら知りつつその立場に甘んじてきたことがわかります。
最も重要なスキル インテリ編
資産運用のプロ、経済アナリスト、上場企業の雇われ社長、コンサルタントなど、インテリと称される職業に最も必要なスキルとは何でしょうか。
「説明能力」です。失敗や未達の際にいかに巧妙な逃げ口上を考えつくか、いかに自分の責任から遠ざけるロジックで語れるか、それらが彼らの出世に最も影響する能力です。
例えば資産運用を生業とする人達は優れた運用実績が無い連中が大多数であり、例えば政府が重用する経済専門家の提言の多くは国民を貧しくしたにも関わらず、彼らが責任を問われず、出世すらできてしまう理由は、彼らの事後の言い訳が巧妙であることに尽きます。
最近の際たる例は日本銀行。日本でも金融緩和と物価に因果関係があるという間違った仮定を盲信し、黒田日銀が国民財産として最も重要な自国通貨を越権的に叩き売りしてもその理由として掲げていた「物価上昇」は起きませんでした。
すると、金融緩和絶対主義者たちは一斉に自己弁護に走りました。
高橋洋一のような似非学者は、アベノミクスのおかげで「雇用が増えた」「企業が最高益」「株高」「GDP増加」などと自分に都合のよいデータだけ切り取って「説明」すると、世の中の多く、特に努力せずに齢を重ねた一部の中高年は信じ込んでしまうようです。
雇用改善が始まったのは民主党政権の時であり、円安で一部の大企業は潤ったものの日本の大半の企業と大半の労働者は内需型つまり円安により損をしており、彼らの機会損失(円安でなければ得られたであろう収益)は株高で潤った一部資産家の利益より大きく、アベノミクスの円安とGDP成長は誤差の範囲ほどの関係しかなかったことなど、調べてみれば誰でも分かる浅薄な逃げ口上を重ねていることに気づきます。
新たに正規「説明者」に就いた植田総裁は自分のやっている茶番に気付いているはずです。今の日本で金融政策が確実にもたらすものは自国通貨価値の変動であることが実証され、他方でその自国通貨価値の安定という役割は日銀でなく財務省にあるという制度矛盾の下では誰が説明者であろうと茶番以外に演じられるものはありません。
茶番に気付いていないとすれば余程おバカさんなのでしょう。アカデミックの権威を盲信するという初歩的なミスを犯していることから、本当におバカさんである蓋然性は高いかもしれません。
今の物価高はウクライナ戦争が引き起こしたコストプッシュインフレであり、それまでの金融緩和とは何の関係もありません。
超円安が続けば、エネルギーと食料と原材料を輸入に頼る平均的日本国民の困窮は危険水域に入ります。その後、植田氏は私達に「説明」することになります。
市井の経済探偵(自称)
市井の経済探偵を自称する当方、市井の現場におけるファクトを重んじ、権威による各種理論の怪しさを解明したエッセー(市井散文マネー編)がアマゾンキンドルでお読みいただけます。
下記の流れの縦糸に、多数の諸事実と分析を横糸に紡ぎながら、鍵を探る物語です。
1.諸前提
前提1).日本の人口減少は今後も止まらない
その根拠は人口転換論。人口転換論には2種類の計量分析がある。
人口転換論① 多産多死から少産少死への転換(Kingsley Davis, Karten Mason等)
18世紀から20世紀にかけて死亡率の低下と同時に出生率も下がった(平均寿命と出生率の相関係数:-0.8)
人口転換論② 豊かになることによる出生率の低下(F.Notestein)
一人あたりGDPと出生率の相関係数は-0.6
上記の両方に該当する日本の出生率の低迷は今後も続くと前提しなければ無責任。
前提2).既婚者の出産意欲は下がっていない(各種調査により判明済みの事実)
前提3).結婚数が低迷する要因は若年層の低収入(同上)
2.前提1)のもと、現在の社会保障制度のままででどうなるか
老齢年金:賦課方式であるため人口減少は現役世代の負担増により可処分所得が減る、または年金減額で受給者が貧困化する
医療保険:現役世代の負担増により可処分所得が減る
上記前提2)、3)により、少子化は継続する可能性が高い
少子化の進行で現役負担は更に増える悪循環となり、結果として現役世代(特に若年層)の生涯的貧困が広がる
3.現役世代(特に若年層)の生涯的貧困と引き換えに現在の社会保障制度を続けるコストとベネフィット
保険料負担や税を上げることで既存制度を継続する場合のコスト
コスト1)景気低迷:現役世代の可処分所得低迷は消費と投資の低迷を招き、一人あたりGDPが減少
コスト2) 未来社会:不景気で社会インフラや教育への投資ができず、社会そのものが維持できない
コスト3)不幸社会:景気と幸福度は一定の関連があり、生涯的貧困の普及は国全体の幸福度を確実に下げる
コスト4)国家消滅:少子化の進行を緩やかにしなければ日本人は減り続け、千年単位で続いた日本国家が消滅する可能性がある
保険料負担や税を上げることで既存制度を継続する場合のベネフィット
ベネフィット1)既得権益の温存:行政(厚生、財務)、医療セクターなどの権益が守れる
ベネフィット2)通貨価値の防衛:財政赤字が増えることで円が下落するリスクの一つを避けられる
上記から明らかに現制度継続はコストがベネフィットを大きく上回ると認識できる
4.適した制度とは?
前項により現在の社会保障制度は変わるべきだが、どう変えたらよいのか?
・年金の積み立て方式への変更:移行期間の世代間不公平が大きすぎて非現実的
・国債発行による社会保障財源化:現状の財政制度下での発行増加は消費者不安を増加させ更なる消費低迷を招く
・移民国家:移民に依存した人口増は社会混乱を招く。百万人単位の潜在引きこもりや高齢者の労働参加がより現実的、効果的
・財政イノベーションによる第3の道:緊縮財政でも積極財政でも解決にならないため、財政イノベーションによる第3の道を切り開くしかない
市井散文 マネー編 市井の経済探偵
水アレルギー?
アメリカのサウス・カロライナ州の22歳の女性が水アレルギーに悩んでいるという記事があります(下記)。シャワーで肌荒れになるとのこと。
アメリカ発の話はまず金儲けのための陰謀であるか否かを確認する必要があります。この記事を読む限り、医薬系企業の金儲けの種まきの可能性を否定できません。水に含まれるどの成分に起因するのかすら不明です。いずれにしても患者?数は世界規模でも100人以下とのこと。道徳規範が消失したアメリカ、こんな記事は更に増えるものと予想します。皆さんも鵜呑みにせず自分の頭で考えて判断してください。
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市井散文 起業編
起業、または見栄の発情。水広場的に紐解きます。アマゾンKindle版です。
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市井散文 マネー編
実体経済の現場から見える日本経済再生の条件。アマゾンKindle版です。
市井散文 マネー編
Good News
ベネッセのMBOは久しぶりのグッドニュースでした。
日本経済の粗利は増えず、株主還元シフト止まらず、早晩賃金は元通りになるはずです。
小粒でどうしようもないのに、上場したがる人達が絶えない日本。
日本は上場企業が多すぎる。今の半分で十分。ドイツと同じぐらいで丁度良いでしょう。
福武氏のような人が10年後に首相になっていたら日本は明るい。
ドライバーとの会話
今日、資材納入に来たドライバーさんとの会話
「お疲れ様です。」
運転も齢のせいか結構疲れるね
「失礼、70歳ぐらいですか?」
73。
「歩合給なんでしょう?」
これ(当方への納入)で6千円。今日全部で7千円ぐらいかな。会社がトラックを買って、それを譲り受ける格好だから、その分毎月引かれるし、カミさんも働いて何とかやってる。
「お子さんがいれば、一緒に住んだり?
子供達は一緒に住まないよ。
「そうですか。何もできないけど、お互い頑張りましょう。」
Ethos Water?
タッカー・カールソンの動画を見ていたら、ADLとかいう組織のリーダーの説明をしていて、その人がEthos Waterとかいう水の会社で富を築いた事が分かりました。
恥ずかしながら勉強不足でEthos Waterという会社を知りませんでした。wikipediaでは水の売上から水不足の地域へ寄付するビジネスモデルで、起業数年でスターバックスに会社を売却したといいます。
典型的な偽善ビジネス。その理由1)水不足解消がミッションであれば新たにミネラルウォーターを売るのは無意味、善行と化粧された巧妙な広告であり、真の狙いはミネラルウォーターの売上最大化に過ぎない。2)水不足の地域で採水してミネラルウォーターを作っていた。3)たった数年で事業を売り、抜ける、すなわち真の目的はカネ。創業者が水不足の現場で井戸を掘った形跡もない。
水広場でも以前Message in a bottleという商標をとって似たようなモデルを起案しましたが、あまりに偽善的、自分でボツにしました。儲けるビジネスモデルとしては正解かもしれませんが、人としてはすべきではない。水広場は水で健康を広げるというミッションに向け単純に水そのもののメリットで販売するだけで、そこに巧妙さは不要。
世の中のNPOやNGOのゆうに半分以上は名声や浮利を狙った偽善事業でしょう。エリート達によるものは尚更。市井的な多数の実体験から当方はそれを知りました。
アメリカはじめ、カネを人生の目的とする連中が多い中、金儲けの手法も巧みになっているようです。皆さん、お気をつけください。
戻すか捨てるか、捨てる。
見識足らずの元芸能人や社会経験不足の元高級官僚達が巣くっている参議院。貴族院に戻すか、でなければ廃止するのが日本の為です。
貴族院は戦争に負けて無くなり、日本国憲法という詐称のもとで運用されている現憲法で参議院に変貌し、やる気とカネがあれば誰でも立候補ができる、民主主義ブラボーという左的ユーフォリアにずっと覆われた戦後。
自由と民主主義。欧米の制度は優れていると言われますが、自身の多方面の実体験から、それが誤りと考えるに至りました。
少し逸れますが、私の前職時代の同僚にウィリアム・ウォルドグレイブ(Lord William Waldegrave)というイギリス人がいました。彼とは確か2001年から2005年までドレスナー・クラインオート・ワッサースタインの投資銀行本部の金融セクターグループで一緒に仕事をしました。何度か日本に呼んで大手金融機関のトップ達に紹介した際には丁寧に世界情勢を説明し喜ばれ、また私が懇意だったロンドンの同僚が会社を去る際にはわざわざ東京の私に電話をして寄こし部下が退職に至った理由を真摯に説明し、道徳を備えた人でもありました。ロンドンでアメリカのことをUSAではなくUS of Aと電話でまくしたてていた彼は格好よく、そのフレーズをよく真似たものです。
彼は当時からライフ・ピア、つまり世襲なしの貴族院議員でした。終身、そして基本給ゼロの議員。首相などから指名される貴族院議員、終身ですので数は増える一方、他方、下院のハウス・オブ・コモンズより権限は大幅に小さい。民衆選挙で選ばれないが、時の首相などに立場も含む総合能力で賢人と認められ選ばれる一代貴族議員たち。国家にマイナスではないからこそ貴族院は続いているのでしょう。
世界最先端の自由かつ民主的憲法のもとスタートした戦後日本、今あるのはデモクラシーという偽名に隠されたOchlocracyの支配。トックヴィルの言った通り、そしてアメリカの猿真似の結果。
日本をこれ以上沈ませないために、制度においてはまず参議院を貴族院的なものに戻すかまたは捨て去る。であれば、捨て去るしかないのは明らかではないでしょうか。