中国の水問題をどう捉えるか



中国の水質問題は多くの人が知るところ。水道水はそのままでは飲めず、水道水や井戸水をろ過したボトルドウォーターが町中で売られています。

ところで、エコノミストなどの記事によれば、水質以上に懸念されるリスクが水量だということです。

中国の西部、南部が水の主要産地である一方、中央、北部、沿海部では水が足りていません。中国における水の使途の9割が農業と石炭鉱業であり、それらの多くは後者の地域に位置するため、深刻な水の南北格差が起こっています。

共産党ももちろん手をこまねいていませんでした。南から北に運ぶ運河を造成しました。計画された3ルートのうち、東ルートと中央ルートは既に利用開始されています。

しかしこれら運河では到底北部の水需要に応えることはできないようです。一運河で北京一都市の需要すら対応できないのが実態だといいます。

ではどうすればよいか。

ロケット飛ばして雨を降らせる? 僕には想像できません。

海水淡水化か? プラントのコストが高く、脱塩時の副産物で環境にも悪く、大規模な海水淡水化は勧めません。

こう考えてみると、いかに技術が進展しようと、水循環で土木工事と森林造成が基本であることは変わりませんね。その点で、ローマ水道を造ったアッピウスや利根川東遷を命じた徳川家康の視野を超えるのは難しいことなのかもしれません。



(図の赤い部分が深刻な水不足、緑部分が懸念が低い地域。太線が3南北運河)

欧米の専門誌は、中国の水不足の問題への解は需要管理、すなわち北部の水道料金を上げるぐらいしかないが、それは経済を鈍化させるため、今の共産党指導部にはとれない選択肢と見ています。

その見方は当方も同じです。

でもでも、本当に解は無いのでしょうか?

そんなことを考えていた時、地図上のある国が目にとまりました。その国は水資源大国。急峻な地形により豊富な淡水が海に流れる贅沢な国。そうです、お隣の日本です。

以前のプロジェクトで瀬戸内海の離島における「海底送水」を知りました。水不足だったり水道設備のない離島に海底パイプで生活用水を送るものです。

別プロジェクトでは、ニュージーランドの飲用天然水を20トンの巨大袋に入れて日本に運び、日本でペットボトルに充填する実験を行いました。

海底送水にしてもバルク輸送にしても、技術的に大きな課題はありますが、前者は洋上風力や波動発電を使えないか、後者はバラスト水をスムーズに浄化する技術で何とかならないか、豊富な経験知のあるLNGの海上輸送の応用が利かないかなど、可能性の追及には意味があります。

海底送水のポイントとしては九州~上海ぐらいでしょうか。ざっと1,000km。それを遠いとみるか、近いとみるか。遠いと見えたら、例えば韓国済州島が地理的に有利ですから韓国政府と協力するのも選択肢とならないか。

今の上海は水が豊かな浙江省があるため問題ないように見えますが、それが正しければ、いつまで続くか?

バルク輸送含め今の技術では無理、だからこそ日本が先鞭をつけるべきだと思います。例えばリタイアされた各方面の技術者の方々が知恵を出し合ったりすると決して実現不可能でないように思えて仕方ありません。

ロシアによるウクライナ一部の強奪をドイツは強く非難できないでいます。資源というのは供給側が圧倒的に優位のようで、供給者は経済的利益と安全保障の両面のメリットを得ています。

森林7割で降水に恵まれ、過去の公害を乗り越えた淡水大国の日本と、これから深刻な水不足が避けられない中国。

国力において相対地位が逆転し、経済と安全保障の両面で日本はより戦略的に中国と付き合っていく必要があるように見えます。

水広場的な戦略とは、相手を顧客にすること。そして商品は顧客にとって代替の利かない資源。

中国の水不足という事象に対し、ろ過技術の提供といった小さな話もいいですが、上記2案の現実性はともかく、日本はもっと戦略的に捉えていくべきです。

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