アマゾンというデフレ製造機

今の日本でマネーを増やしてもデフレは解消しないということを改め感じさせる体験がアマゾンのセラーセントラルでできます。

セラーセントラルとはアマゾンでモノを売る側の管理機能です。

例として私の会社がお酒を売っているとしましょう(実際に売ってもいます)。

2,000円で仕入れたお酒を2,500円(粗利20%)で出品したとして、アマゾンで売れたときの粗利はアマゾン手数料(一般的に15%)控除後の5%、125円。

メジャーな通販サイト、特にモール機能のサイトでは同じ商品を複数の売り手が販売しています。

同じものを売っているアマゾンの他の出品者がいる以上、粗利20%がいいところ。アマゾン手数料後の実際の粗利は5%。事務コストを考慮すれば実質粗利はゼロといっても過言ではないでしょう。アマゾン手数料が10%の場合でもそう大差ありません。

でもそんな事は普通の現象で、アマゾン作曲演奏によるデフレ狂騒曲のほんの序章にすぎません。

本当にすごいのは、売り手に対し毎日のように「売れていない商品の価格を見直しませんか?」という自動メールが届き、そこには当方掲載商品のいくつかが表示され、提案価格として激安価格が同意ボタンと一緒に既に設定されていて、それを1クリックするだけで最安値が随時更新されていく仕組みであること。

その商品はアマゾンが望むほどは売れていないため、そのオレンジっぽいボタンは魅力的に映ります。私も最初ははいはいと押していました。でも考えるまでもなく、アマゾンはこちらの原価を知りませんから、当方の赤字は勿論お構いなしです。知らず知らずのうちに赤字販売をしている業者さんも多いでしょう。

日本で兆円単位で販売しているアマゾンが繰り出す強力な価格下落圧力、アマゾンアイテムの多くは百貨店やスーパーその他の既存小売店でも売られているものですので、影響は決して小さくありません。

消費者としての立場からすれば「安い」が一番ですが、その安さの根拠がまっとうであるか想像できる市民でいたいと思いますし、皆さんにもそうであってほしいと思います。

売上目標のプレッシャーなどで無理な廉売がはびこっていますが、その結果つけを払わされるのは給与の上がらない作り手側の従業員であり、コスト割れ送料にも関わらず数分遅れたといって理不尽に怒鳴られる宅配ドライバーであり、諸々の社会コストを反映した適正価格でたまたま同じものを販売しているのに「暴利をむさぼる悪徳業者」とレッテルを張られる販売者であり、街の文化をつくってきた小さな売り手たちでありますが、彼ら売り手の多くは世界のあちこちで歴史の幕を閉じてしまいました。

彼らのツケ(コスト)でカネを余分に得ているのは消費者としての私達です。

私が近年コンビニで安くて良いものを買うとき、昔感じていた得した満足感が生じないのは、反対側でツケを払わされている人たちが見えるようになったからです。

デフレの水広場的定義は「カネの価値は今日より明日のほうがもっと高くなると思いこむこと」ですが、それは本来手段であったカネがその蒐集が目的化となった近代資本主義の欠点でもあります。

カネは大事ですが、それに従属するのは醜いものです。

欧米や中国、そして日本でもカネ蒐集目的の従属者が増えているように見えます。

イギリス、フランス、ドイツなどでは僕のようなことを言う人の割合がそれなりに、マイノリティながらも存在するようにも見えます。

良い品物に対しては作り手に敬意をはらいフェアプライスを支払う。世界的にみて、日本の小売現場で売られているものの多くは良い品物です。

フェアプライスでの取引が増えていくためには、私たち消費者自身がもっと他者にフェアで大人になる必要があると思います。

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