SROE(2)

SROE(Social Return on Equity)を提唱する当方、SROEに関する2回目の投稿です。

初回ではSROEの概念と定義を示しました。

会社に残す最終利益を分子とするROEと反対に、SROEの分子は社会に捻出したおカネです(主に労働・仕入への支払額)。

会社と社会という文字並びと同様、ROEとSROEは数式的にも正反対で、更に前者は財務的理論、後者は社会経済的思想です。

なぜSROEを志向しようというかといえば

・GDPを拡大するからです

個別企業の利益だけを見るROEと異なり、SROEは当該企業の業界、サプライチェーン、労働者に与えた価値を計ります。

仕入原価を下げればその会社の粗利、そしてROEは上がりますが、仕入先の粗利が減り、GDP拡大に寄与しません

人件費を下げればその会社のROEは上がりますが、労働者の消費可能額も下がり、その分ほぼ確実にGDPが減少します

ところで、なぜGDPが大事?

社会保険制度を見れば明瞭ですが日本社会は経済成長を前提とした建付けになっているからです。

収縮経済を前提とした新たな社会構造にシフトする!?というのは一見よさそうに聞こえますが、具体現実性を欠きロマンティックかつ抽象的、つまり無責任。

生産労働人口の所得拡大は今の日本経済で求められる最重要課題の一つであり、そのため、所得総計を示すGDPは様々な経済指標の中でも最重要といって差し支えありません。

デフレ脱却へ!

株主資本主義に染まった日本においては株価を上げるための代表的経営指標であるROEの極大化志向はどの上場企業経営者も避けられません。

低成長社会で売上増大は不確実であるため、当期利益極大化には低コスト化が求められ、中でも固定費の削減や低水準固定化は効果的、ということでこれらは1社の戦略としては正解ですが、裏を返せば経済のパイを縮小させる「合成の誤謬」が顕在化、つまり平成以降の日本にはデフレが進む構造的トレンドがあったわけです。

その流れを変え、デフレ(つまりGDPの停滞)から脱却するためには、小賢しい新理論を打ち出すのではなく、私達の先祖が教えてくれた真っ当な「思想」に立ち戻ることです。

近江商人は三方善しといい、また高く買って高く売るのが商売の基本といった古物商もいました。

SROEはこれら古くからある思想を具体的に数値指標にしたものといってよいかもしれません。

追及すればするだけ赤字が増え、倒産に近づく指標であるSROE。

それゆえ、高いSROEを誇る企業、また長くそれを維持する企業の社会価値は高くなり(social valuation)、地域経済、社会経済に欠かすことのできない存在となります。

企業を評価する際に、利益や株主資本だけでは計れない価値があるということです。

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