全国飲泉めぐり 6.国見温泉(岩手県雫石町)
緑色に輝く硫黄泉とその隣で湧く冷泉
早池峰霊水への訪問を終え、今日の最後の目的地である国見温泉に向かう。秋田県境に近く、秋田駒ケ岳をはじめとする名峰が連なり多くの登山家たちに愛される山岳地帯に湧き出る秘湯だ。登山客にとっては五合目のあたりで丁度よいという。あの田沢湖も近いところにある。
途中に小岩井農場があった。予定に無かったけれど立ち寄った。搾り立てミルクを温めてもらって飲む。胃のあたりに少し優しい味を覚える。ここ数日、栃木・福島・岩手の3県で強酸性から高アルカリまで異質の温泉水を次から次へと迎えている胃腸。
そしてしばらく走ると山道になり雨足も強く、暗くなってきた。雨の中、国見温泉峡となり今回の目標である石塚旅館さんに到着する。
国見温泉 石塚旅館
家族ぐるみで迎えてくれた石塚旅館さん。専務の石塚さんに旅館と源泉の特徴を丁寧に分かりやすくレクチャーしてもらった。国見温泉石塚旅館は3点で表せるという。
・緑色の温泉であること
・駒ケ岳の天然水が飲めること
・自家発電の不便な宿であること
仕事として僕は最初の2点にそそられる。3点目は宿泊客としてくすぐられた。自家発電もそうだし冬はそもそも営業できない環境にある特別な秘湯なのである。
源泉がなぜ緑色に見えるのか?
多硫化イオンの生成(黄)と炭酸カルシウム及び硫黄の微粒子による光の散乱の2つの機構が重なって緑に見えるとのことである。実験でも黄色い多硫化イオン溶液にCaCO3(炭酸カルシウム)を加えて振ると黄緑色になったという。
泉質は含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩泉。pHは7.1、1kgあたりの溶存物質は4gを超えるという濃厚な成分構成。胃潰瘍などの消化器病や慢性すい炎など、この温泉水を飲んで症状が緩和したという実例は多いという。石塚旅館に宿泊し、入浴とセットの飲泉が好ましいが、何らかの理由で宿泊ができないお客さんがポリタンクを送ってくることもある。
入浴中に飲泉した。思ったほど強い酸っぱさは感じない。どっしりとした渋さがある。強酸性タイプの源泉と比べると個人的には飲みやすいと感じる。
なぜ無色透明で清冽な駒ケ岳天然水も同じ宿で湧いているのか?
鷲倉温泉や早池峰霊水でも目の当たりにしたように、地上の想像を超える様相を呈する地下構造はよくある。硫黄を含み溶存成分が重厚な温泉水と全く違う軟水系でごくごく飲めてしまう冷泉が同じ敷地にある。断裂があるのかもしれないし想像は簡単だが調べなければ分からない。とにかく飲んでみるととても飲みやすくてさっぱり美味しい鉱泉水。コーヒーを淹れてもらったけれど非常に相性が良い。
国見温泉石塚旅館。夏にも近いうち訪問してみたい。
冷水をもつ水広場店長の林君。
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