Land of the rising money
The Economist最新号にインフレが始まった先進国経済で唯一消費者物価が上がらない日本の記事がある。
健康な経済は多くの市民に幸福をもたらし、緩やかな物価上昇は健康な経済の基本条件、そう考える私はデフレを忌み嫌う。
デフレで国民所得はこの30年増えず、平均所得は後発の韓国にも抜かれた、これが今の日本だ。
これまでそうそうたる学者や東大出の優秀な官僚、そして声の大きな政治家たちがやってきたことの結果がこれである。
失敗の原因解明も必要ながら、最大の問題はどうやったら消費者物価が上昇するかである。
貨幣数量説(=金融政策で十分説)は外貨や資産市場へのマネー流入が予測できず現実には機能しない「セオリー」どまりの結果となった。
需給ギャップが原因であれば公的部門の財政出動が正解に見えるが、どの分野への投資が将来までのどう乗数効果あるのか、確かな検証がほしい。
壊れたマシンに油を注ぐようでは話にならず、また金融政策の長所のひとつは公平性だが財政政策はPoliticsの世界でもあり、声のでかい人たちやマスコミが応援する人達だけを豊かにすることにもなりかねない。
政府が破綻することは無く100兆円単位の財政出動は問題ないと考えるけれど、一国民として、過度な円安だけには注意してほしい。
機能不全マシンの典型的な例として、当職が位置する飲料食品の流通構造がある。
当業界の構造的問題として、製造者数と製造者平均事業規模と小売業者のそれらが不均衡であること、そしてその中に低付加価値しか生み出せないパワフルな卸会社が存在していること。
アサヒ飲料の経営幹部と議論した際、オセアニア市場では川上と川下の構造的バランスはよく、製造者の利益も適度であり、よって買収の的にもなる。
そのアサヒを含む国内大手飲料メーカーの清涼飲料の利益はゼロに近い。大手でそれであるから、無数の弱小製造業者は推して知るべし。
イノベーションが働きにくい事業形態のため、どうしてもコストを下げる経営方針を取らざるを得ず、給料が安いまま。
これらの例はマイクロで物価に関係ない、とは思わない。産業構造、業界構造、取引慣行、経営目標の変化(新自由主義など)などが有機的に作用して物価は形成されるので、金融政策、財政政策に加え、産業分析と処方箋が物価上昇には必要だと思う次第。
例えば飲料業界では以下の一つか二つ実行できれば価格は必ずや上昇に転ずるはず
・株主資本主義から卒業する;
上場会社は非公開化。適度な配当と再投資を上回る利益は不要。
ROEの逆指標であるSROE(Social Return on Equity)を導入する。
・マーケットシェア経営者を称えない
古くから日本企業は売上規模が会社の評価尺度。当該企業の給料水準とマーケットシェアを散布図で示し、高シェアで安給料の会社は真のブラックとしてマークする
・製造者同士の連携と低付加価値卸会社の市場撤退
川上はMAよし、提携よし
・規制
規制はダメだ、やっても効果ないという声がありそうだが、本当はどうか? 行政が業界全体に対し価格を上げる指示を出す例はある(税務署による酒類廉価防止)。
規制のマイナスより当該業界の過当競争と低賃金の方が大きな問題
これら今んとこJust idea、適当で申し訳ありません。
いずれにせよこのままではデフレ経済から抜け切れず、つまりカネの価値がこの先も増大しつづけるため、タイトルにはLand of the rising money がふさわしいと思う訳です。
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