政策金利から

まずは短期金利の話、中央銀行の今の政策金利を比較、図の出所はチャールズ・ビレロ氏。

スイスの政策金利がプラスに転じ、マイナスは日本だけ。インフレ率を引いた実質では先進国軒並みマイナス、プラスなのは中国、サウジ、メキシコ、ブラジルといった比較的元気な国。

政策金利や消費者物価(CPI)水準においてスイスと日本は比較的近いものがあります。

日本のCPIが低い理由には構造要因があり、供給面のそれには川下優勢な流通構造があり、需要面では社会保障不安による慢性的節約が固定化したこと、更に過剰な株主資本主義により賃金に回らず若年層中心に購買力が落ちている事などを私は従来から指摘しており、つまり金融政策などに大して影響を受けないという立場です。

このような構造要因が日本のCPIにのしかかる重い蓋だとすれば、スイスに乗っかかる蓋としての構造的要素はどちらかといえば外的要因、隣国に車で買い物に行ける地理構造によりスイス国内の小売業者は値段を上げるのに慎重のようです。

それに対し日本の場合は日本国内で自分達でどうにかできる部分が大きいという話です。

戦後の日本はGHQ政策もあり、戦後生まれの私達は自由、私・個の権利ばかり助長、健全な社会であれば当然それらに付随される義務感、公・集団人としての自覚に欠ける人間がいまや大半と思われ、経営者は自社の成長だけをひたすら追求した結果、過剰競争の状態をどうすることもできず今に至っています。

それが顕著に目撃できるのが量販小売店やネット(アマゾン)の清涼飲料売り場。メーカーの過当競争をいいことに割引競争を煽り、ただでさえ薄利の商品の小売価格を勝手に下げメーカー新商品のブランド構築を阻む。その結果、食品飲料製造セクターの平均給与は低位に張り付いたまま、当方も当該セクターの人達を知っていますが、結婚したくても給料安くてできないのが実態。

今年の物価高といっても、資源高・円安による原価上昇分は小売価格にまで転嫁できていない、つまり全体の粗利は減っている中では賃上げといっても無理があります。

他方、この秋、遅ればせながらも、コストプッシュながらも、飲料メーカーの卸価格の値上げが相次いでいます。これまで小売店側もそれに応じる形で店頭価格を上げました。一方、現時点で聞くところによるとその結果販売量が落ちているといいます。

ここが経営者の能力が分かれるところ。この先の数か月、販売減などに耐えきれず結局価格を引き下げ、つまり囮廉売並に戻す事に応じるメーカーがいたら、その経営者は少なくとも産業経営の器は無いといえます。伊藤園?、アサヒ?、サッポロ?、キリン?、サントリー?・・・

消費者の方には誤解なきよう、モノが安くなって久しい日本、消費者としての私達は過剰な余剰を享受している一方、労働者としての私達は逆に過少な所得に甘んじ、少子化と世代間不公平が加速しました。今は消費者としての自分達を律し、フェアな価格を支払い、労働の価値をもっと重んじるようになるべきではないでしょうか。



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