コーマック??

水広場的BOOK論とかいうと偉そうに聞こえますが素人の単なる読書感想です。

今年初めて知った作家、コーマック・マッカーシー。 
占領軍最高司令官とスパイスのような面白い名前だ(それはマコーミックだ)、などとぼんやりしていたらアメリカ現代作家の重鎮であるという。 

最初に読んだのは「ザ・ロード」。タイトルそのままのロード小説だ。人類が破滅した未来に生き残った父と子がひたすら南に向かう。ショッピングカートを押して歩く彼ら。火を運んでいるというくだりが何度も出てくる。火とは何だ?希望?良心?命の縦糸?それとも?
人間が怪物化するグロテスクな世界が進行する中で人の心を決して失わない息子は天使の光を放ち、父は彼を守るためだけにいるかのようです。極限の状況における対比からは鮮明なイメージがつくり出され、その鮮度は落ちない。 

 
解説から作者は60歳を過ぎて息子を授かっていることが想像できる。
「絶対的に」愛しいもの。多分そういう作品なんだ、と思った。
映画も撮影されたらしく来年公開だ。

「全ての美しい馬」
「ザ・ロード」1冊でコーマック・マッカーシーに惚れてしまった。大げさには熱を伴うインファチュエーション。調べると前からたくさん書かれている。その中から面白そうなものを選ぶ。All the pretty horses. これにしよう。

邦題を検索すると直訳のようで「全ての美しい馬」。英語版を早速買いこみ、ロードものらしきあら筋に期待が高まる。

テキサスの16歳の主人公が友人と馬に乗ってメキシカン・ボーダーを越えていく話。
前半は辞書なしではしんどい。カーボーイ用語が多発され、まあ当たり前なんだろうけど国境を越えるとスペイン語が乱入してくる。

そのうちに著者独特の潔い言い回しが快適になってくる。描写は過去形と現在形にきっぱり分かれ進行形は少ないように思われ、シンプルな動詞が多用される。食べた、唾をはいた、飲んだ、座った。主人公John Grady Coleがどれだけateし、spatし、drankしてsatしたことか。とても潔い感じ。そして大地との距離が限りなく近い。

後半では主人公が囚われの身になったり、俄然展開が早まる。少年といえる歳の主人公、細部では経験不足、でも男らしいハートと希望を持ち冒険し、大失敗、大失恋、暴力と正面から対峙する。そしていつも傍らには馬が寄り添っている。

アメリカ的青春。とにかく、ジョン・グレイディ・コールみたいなヤツが友達にいたら最高だ。 

Leave a Reply