市井の経済探偵(自称)
市井の経済探偵を自称する当方、市井の現場におけるファクトを重んじ、権威による各種理論の怪しさを解明したエッセー(市井散文マネー編)がアマゾンキンドルでお読みいただけます。
下記の流れの縦糸に、多数の諸事実と分析を横糸に紡ぎながら、鍵を探る物語です。
1.諸前提
前提1).日本の人口減少は今後も止まらない
その根拠は人口転換論。人口転換論には2種類の計量分析がある。
人口転換論① 多産多死から少産少死への転換(Kingsley Davis, Karten Mason等)
18世紀から20世紀にかけて死亡率の低下と同時に出生率も下がった(平均寿命と出生率の相関係数:-0.8)
人口転換論② 豊かになることによる出生率の低下(F.Notestein)
一人あたりGDPと出生率の相関係数は-0.6
上記の両方に該当する日本の出生率の低迷は今後も続くと前提しなければ無責任。
前提2).既婚者の出産意欲は下がっていない(各種調査により判明済みの事実)
前提3).結婚数が低迷する要因は若年層の低収入(同上)
2.前提1)のもと、現在の社会保障制度のままででどうなるか
老齢年金:賦課方式であるため人口減少は現役世代の負担増により可処分所得が減る、または年金減額で受給者が貧困化する
医療保険:現役世代の負担増により可処分所得が減る
上記前提2)、3)により、少子化は継続する可能性が高い
少子化の進行で現役負担は更に増える悪循環となり、結果として現役世代(特に若年層)の生涯的貧困が広がる
3.現役世代(特に若年層)の生涯的貧困と引き換えに現在の社会保障制度を続けるコストとベネフィット
保険料負担や税を上げることで既存制度を継続する場合のコスト
コスト1)景気低迷:現役世代の可処分所得低迷は消費と投資の低迷を招き、一人あたりGDPが減少
コスト2) 未来社会:不景気で社会インフラや教育への投資ができず、社会そのものが維持できない
コスト3)不幸社会:景気と幸福度は一定の関連があり、生涯的貧困の普及は国全体の幸福度を確実に下げる
コスト4)国家消滅:少子化の進行を緩やかにしなければ日本人は減り続け、千年単位で続いた日本国家が消滅する可能性がある
保険料負担や税を上げることで既存制度を継続する場合のベネフィット
ベネフィット1)既得権益の温存:行政(厚生、財務)、医療セクターなどの権益が守れる
ベネフィット2)通貨価値の防衛:財政赤字が増えることで円が下落するリスクの一つを避けられる
上記から明らかに現制度継続はコストがベネフィットを大きく上回ると認識できる
4.適した制度とは?
前項により現在の社会保障制度は変わるべきだが、どう変えたらよいのか?
・年金の積み立て方式への変更:移行期間の世代間不公平が大きすぎて非現実的
・国債発行による社会保障財源化:現状の財政制度下での発行増加は消費者不安を増加させ更なる消費低迷を招く
・移民国家:移民に依存した人口増は社会混乱を招く。百万人単位の潜在引きこもりや高齢者の労働参加がより現実的、効果的
・財政イノベーションによる第3の道:緊縮財政でも積極財政でも解決にならないため、財政イノベーションによる第3の道を切り開くしかない
市井散文 マネー編 市井の経済探偵
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