誰もが気になるイチロー選手
WBCにおけるイチロー選手は千両役者でした。決勝戦の決勝打はまさに感謝感激、僕の記憶に永遠に刻まれることでしょう。イタリアなども含めた全出場チームが競い、完全といえるクライマックスが待っていた決勝の今大会のDVDをMLBは自分たちの為にも世界中に宣伝すべきです。
イチローが気になったついでにと、週末にMLBのHPやアメリカの新聞などを中心にいろいろと見ていくうち、昨年中にマリナーズのメンバーがイチロー選手は自己中心的でチームの勝利を優先していないと批判した記事を発見。「何だと?」、ジェラシーが背景にあるとの観測もあったけれど、キューバのカストロ前議長も世界一と認めた僕らのイチローだからこちらは穏やかでない。
往年の名選手が引退し、クラブハウスにおいてもリーダーシップを取れるのは実績からしてイチローだけといった部分もあるのかもしれない。しかしチームを優先していないという批判は間違っている。バスケットボールやサッカーなどでは自分勝手なプレーがチームの勝利に害を及ぼすことはよくある。パスすべきところをドリブルや無理なシュートで自滅というのが典型的なパターンでしょう。
しかし野球の構造は全然違い、各自の好成績とチームのそれとの関連はかなり高いはず、前者がトータルで他チームを上回れば、打順や戦術のヘマが無い限り絶対勝てている(と、素人の僕は思う)。昨シーズンも開始当初は監督が「イチローには走らせる」としてイチロー選手はそれに従い前年より盗塁を敢行していたと記憶しています。マリナーズが勝てなかったのはイチロー以外の選手の個人成績をまず検証すべきで、そしてかりに低調成績の原因にチームの暗い雰囲気がもしあったとしてもそれは監督はじめ管理サイドの責任範囲でしょう。皆を引っ張るリーダー的存在の選手がいるチームがあったとしても、それはあくまでたまたまのプラスアルファ要素であり、数億円ないしそれ以上もらっているプロ中のプロ達がリーダー云々を言い訳にするのは誰が見ても筋違いと思います。僕らのヒーローにとってこんな下らないことが支障にならないよう、マリナーズのワカマツ監督の指導力を期待します。
次回のWBCを日本で共催する提案など、今後MLBと対等に伍していくためには政治力が必要です。政治力には相手の思考パターンを熟知することが求められるでしょうが、Billy Beaneのマネーボールにもあるとおり、MLBのチーム戦略の特徴のひとつに、徹底した統計手法に基づく科学的なベースボールというのがあるようです。僕も熟読しましたが、そこでは打率、打点、本塁打という3カテゴリーだけでなく、というよりもそのどれより大切ともいえるのが出塁率という発想があります。また、本塁打と打点でイチロー選手を上回るメジャーリーガーは多数いることは周知と思いますが、打率と出塁率ではイチローがトップだろうと僕も高をくくっていました。実はその4カテゴリー全てにおいて現役を通しイチロー選手を上回るとてつもない選手がいたのです。カージナルズのプホルズですが、2001年のMLBデビューから2008年までの通算打率.334、出塁率.425、打点977、本塁打319本、その全てがイチロー選手を上回る。そんなことも知りながら交渉を進めることが必要でしょう。しかしプホルズ選手について言えば、僕は総合的にイチロー選手が上だと思っています。なぜなら、結局ステロイド頼みになるパワーベースボールでしかなかったMLBのフィールドに新たな次元を創り出した功績、そしてWBCで証明されたとおり、記録だけでなく、前述国リーダーのみならず世界中の少年達の記憶に鮮明に刻まれ尊敬されるプレーヤーであるから。統計だけが栄光をつくるわけでなく、仮に統計を見るとしてもイチローが気になる人口規模の統計をとれば他選手の比でないと思うのですが。
日本がMLBと互角にやっていけるよう、統計的思考や商業上のバジェット面など相手側が出すであろうカードを正確に予想した上で、日本全体が野球に持つ情熱や子供も含めたプレーヤー人口(数字か)などを含めた3次元のコミュニケーションでもって交渉していってもらいたいと、勝手ながら期待しています。
by Horiuchi
Leave a Reply