水広場的ファイナンス論1.

資本。

準備会社として資本金500万円の確認株式会社からスタートしたグローバルウォーター。僕と相棒は共同発起人として折半出資。営業開始時に1000万になり確認を解消、その後のキャッシュニーズに伴って小刻みに増資、今は5000万円になっている。当初にご出資頂いた2名の恩人を始め、僕らのスポンサーとして大切な個人株主の方々が現れてくれたことに改めて感謝する。

とにかくキャッシュが大事な出来立てベンチャー。しかし、いきなり設立登記自体で15万円、その前の定款作成で9万円、何をせずとも会社登記までにそれが最低必要、増資の度には0.7%か3万円の高いほうを登録免許税として納める。1円資本金制度などつくりながら、システムとして矛盾を感じた。

また、地方住民税は損益とは関係なく資本金の規模により課され、東京都の場合、資本金2000万円~1億円までは一律18万円。調達手段としてデット(負債)よりエクイティ(資本)が適する新ベンチャーにとっては、何故資本金に課されるのか?何故そんなにどんぶりのレンジなのか?という2つの疑問が生じるシステム。理由や背景を知るべく窓口の区役所で聞いたところ、「法律で決まっているので。。」という返答だった。立法当時と現在は環境が違っているはずだけれど。こんなところでもベンチャーがリスクマネーを集めやすいシステム作りが求められている。

その後、こちらからアプローチして国民生活金融公庫と文京区あっ旋融資という、公的制度融資のお世話になった。振り返ると融資額は足して今の月商の半分といったところで多額ではないが、最初は赤字企業でも借りられるのか、試験的な意味もあった。区のあっ旋融資では町内会に入ると枠と利率の両方で大幅に有利になったり、申込当事でも創業融資の枠がもっと大きく取れた可能性もあったけれど、事業の実際のROAを知らなかったから思い切ったデット調達を避けた。

新銀行東京から融資の斡旋の電話(コールドコール)が来たこともあった。内容を伺って丁寧に断らせてもらった。想定される利率が僕らが利用している制度融資より単に高かったからだ。制度融資は中小零細の経営と雇用安定を支える立場ゆえ、貸出金利は対象リスクに対して低く抑えられていたり、リスクが高く民間では貸せない先に融資するわけで、当然の結果として民間会計基準では債務超過になる場合があるが、それを国や地方がバックし資金供給を行い、要は間接的に一人ひとりが少しずつシステムを支えるような仕組みだ。非営利的レゾン・デートルを持つ制度融資が存在する社会で、新銀行東京に対する需要は最初から限られていた。営利機関としての立場でサブプライムのごとく非適格者向け乱脈融資が起こった本質的な原因はミス・マネジメントというより、都銀の貸し渋りの真相を見誤り構造的にニーズの存在しない業務を始めたことだと思っている。

ところで、ここにおける本当の疑問は新銀行東京ではなく、制度融資の根幹たる公的金融機関の民営化の先について。民営化後に適正利ざやの適用(貸出金利引き上げ)や回収(貸し剥がし)が必要になることは想像でき、事実として現存する借り手が頼るものとして自治体のあっせん制度ぐらい、ということになる。借り手からすれば、現在の約定がまさか変わるとは思えないが、とにかく急激なシフトは避けてもらいたいと願う。

株主が増えていくと、当たり前だが僕ら共同発起人2名の持分比率は薄まる。発起人&経営者として一定の比率を維持することは意思決定スピードで有利であり、結果的に他の株主利益にも資するはず。

そういう時には自らが追加出資すればよい。しかしそんなお金はない。家族の生活はある。こんなジレンマは自宅マンションを売却することでひとまず解消した。反対するかと思った家内はこちらの悩みをどこかで感じていたのか、理解してくれた。江戸っ子気質というのか、どこか潔いところがあり、有難いことだ。しかし初めての不動産売却体験、簡単に売れるものでもないことが分かった。売りに出してから6ヶ月、市況悪化が見えてくる中、大幅に値段を下げて何とか売れた。でもまだ買った時の値段より高い。売りのアクションがもう少し遅れていたらと思うと冷や汗もの、ぎりぎりセーフであった。新築で買ってから4年、引越しの時に寂しさを感じたけれど、それほど悪くもない投資だったと適当に納得した。ただ、近くの賃貸物件に越した後、それまで明るく近所に馴染んでいた5歳の息子が黙り込んだ時は少し辛かった。「大丈夫。ここだっていいマンションだし、これからもいいご近所とお友達が一杯できるよ」。それから数ヶ月、6歳になった息子は僕がUチューブで見つけた恐竜と豚のおならアニメで笑い転げている。

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