Wasserwende

今ドイツでは環境大臣が音頭をとり、Wasserwende(水の変換)すなわちミネラルウォーターではなくもっと水道水を飲もうという運動を広げようとしています。

ドイツの一人当たりミネラルウォーター年間消費量は現在約150L、私が駐在していた四半世紀前と比べても3倍以上に拡大しています。

日本と違い水道水は飲み水というより浴室やトイレの生活用水として主に位置付けられているドイツ、Wasserwendeはそれなりに有意義です。

他方、ミネラルウォーターの一人あたり平均消費量がドイツの半分を遥かに下回り、大半の国民の主たる飲料水は水道水という日本においては、外国の真似をして声高に水道水利用を訴えミネラルウォーターを非難すればよいというものではないでしょう。

https://www.thelocal.de/20190815/wasserwende-germany-urges-more-people-to-drink-tap-water-to-protect-environment

こないだまで水道が無料だった国

アイルランドでは2014年まで家庭用水道料金がかかっていませんでした。

家庭用水道事業は各地方自治体が運営していましたが、それら29県と5都府の税収で賄われていたのです。

2008年の金融危機で大打撃を受けた同国政府は緊縮財政に転向し、重要施策の一つとして2013年に国営企業の子会社「アイリッシュウォーター」を設立、34自治体から全ての飲用水と下水の運営を順次引き継ぎ、規模の経済と重複運営解消によるコストダウンと効率化を図り、収益モデルは水道料金徴収型に転換、高い漏水率などを改善するために設備投資を積極的に推進する計画の下、運営がスタートしました。

アイリッシュウォーターはそれまで水道料金を払わずに済んでいた国民からの反発を招き、また緊縮財政の象徴として各政党も入り乱れての大騒ぎになりました。

現在においても不満を持つ国民は少なくないようです。

そんな中、今週、アイリッシュウォーターの運営するいくつかの地域で「煮沸指示通知」なるものが発信されました。水質に問題があるため飲用などには煮沸を要するということです。

水質問題は国営化と関係があるか分かりませんが、市民の不満解消に遠いことは明らか。

国民が国営化された水道に不満を持っている、その最大要因は水道が無料から有料になったことで間違いないでしょう。

水道を公共物として定義すればそれを税で運営するという概念自体は理解できます。しかしながら、成長のピークを過ぎた成熟国家が巨大インフラ装置つまり巨額の設備投資を伴う水道事業を、税収だけでコンスタントに賄うのは現実的ではありません。

つまり本件は国営化がもたらした問題ではなく、税収だけでは所詮無理であった水道事業の収入面における施策がずっとなかったことが一番の原因。

翻って日本の水道、水道料金収入だけで見れば大赤字です。水道料金を上げるか、コストを下げるか、両方か、の3択となりますが、まず広域連携でコストを下げ、更には小規模水道には塩素消毒義務化を廃止するなどの枝葉の工夫で徹底的に供給コストを下げる。その上で仕方なければ同意にもとづき水道代を上げさせてもらう。事業として儲かる余地のある比較的大規模な自治体では民間事業者への運営委託にrentが発生しない仕組み、契約形態が必要となることは当然ですが、結局なおざりになる建付けになっています。

余った支援水の使い道

地震から3年以上経過した熊本で、震災時に送られた飲料水の130トンが賞味期限を過ぎた現在も残っている件、市では支援を無駄にしないように学校の花壇や作業時の手足洗浄に使ってほしいとのことですが、他にも有効な方法があります。
1.選んで飲む。
賞味期限が切れていても飲める水はいくらでもあります。仕事柄当方は賞味期限切れの水もよく飲みますが、お腹をこわしたことは一度もありません。無除菌無殺菌が義務付けられているEU産天然水で賞味期限から5年以上経ったものでも美味しくいただきました。ナチュラルよりセーフティ優先につきやや過剰殺菌気味の日本ゆえ、国産水なら猶更問題ないといえます。
とはいえ心配なら、より安全なものを選ぶ。選択基準に下記が参考になれば幸いです:
1)大手メーカーの商品(大量生産&P/Lリスク最小化のため加熱殺菌処理されているものが多い)
2)原材料項目における水タイプが鉱水または深井戸水のもの(原水そのものが比較的安全)
2. 炊飯、お茶に
どうせ水を沸かすならいろいろな天然水はいかが。ミネラルバランスによってはより美味しくなることも。
3. 洗顔に
熊本市の水道は地下水でまかなわれている素晴らしく贅沢なものですが、でも少し変化を試すという意味でこれらミネラルウォーターもいいかもしれません。

黒い水

インド西部のヴァドーダラーの起業家夫婦が開発したミネラルウォーター、Evocus。

アメリカで調達したという70以上のミネラル、フルボ酸、フミン酸などを水と調合し、試行錯誤を繰り返してやっと普通の水に近い無味に仕上がったといいます。

それら天然ミネラルが水を黒くしている、つまりEvocusが黒いのは健康によい印ということです。

Blackな液体というとアメリカなどではBlack Goldで石油を意味したり、ギャング役の松田優作の雨などが浮かぶ一方、飲料としてのイメージは浮かびづらい・・・だからこそ、人生を賭けて水を真っ黒けにした彼らの大胆さに脱帽。

水道水も消費税10%・・・

参議院選挙の結果、消費増税への信認を得たという政府の発言から、10月の増税は確定したと思われます。

デフレ期の消費増税がいかに愚策かは藤井聡教授などが言うとおりで詳述は避けるとして、水広場的には水道水の消費税も10%に上がることがどうしても納得がいきまません。

設備更新など水道事業の本源的要因による料金引き上げは理解できますが、生活必需品どころかライフラインの1丁目1番地の水のコストを「税」によって上げるとは・・・

赤字の水道事業はそもそも税金で補填している、というのは別の論点、ここでは低所得者負担を軽くするために導入される軽減税率の観点のお話し。

社会保障の崩壊を防ぐには消費税の引き上げは避けられない!!と論陣を張った大手新聞たちが一緒になってロビーして軽減税率を勝ち取るという異様さ、特に日経は2面フルという大声で社会保障の財源に消費税を主張しながら結局は自分は軽減で負担せずという愚劣さを私達は見ています。

マスコミの弱点を利用したかどうか知りませんが、今回は財務省の快勝なのでしょう。

一方の敗者といえば私達、つまり一般消費者と一般労働者。ただでさえ給料が増えない中、ただでさえ給料の18%以上も社会保険料で払っている中、実質可処分所得をこれ以上下げる策を国がとるのは余程阿呆かあるいは何か別の理由があるのか疑ってしまいます。

労働者として厳しい環境の私達が何とかバランスをとれるのは皮肉にもデフレのおかげで日本は消費者効用の余剰状態にあるからで、同じ100円相当で得られるモノサービスの価値は他の先進諸国を上回っているのは明らか、更には多種類の商品の選択が可能という効用もあり、売価ではなく効用を分子にしたら日本の生産性はエコノミストが言うほど悪くはない、このようにして消費者として得られる超過と労働者として十分得られないカネが何とかぎりぎりバランスしている構造の中、その消費者余剰が強制的に削られるのが消費税増税です。

収入が底辺に張り付いている世帯は多く、景気動向に関係なく安定した生活を送れる役人の皆さんには水道料金が払えず弱っていく者達の姿は想像できないのであると想像してしまいます。

消費税増税が決まりなら、私達に何ができるか? これまでの増税の経験則から、増税後はほぼ確実に景気が落ち込むであろうことから、そのどこかの時期に軽減税率対象を全品目に拡大し、実質的に元に戻させること、姑息ながら技術的には可能と思われるため。

カリストガのウォータートラック

カルフォルニアのナパバレー最古のミネラルウォーターメーカー、カリストガのウォータートラックの彫刻が完成。

鉛、塩素、&マンガン

水道管が鉛の場合など、消毒剤の塩素が炭酸鉛を二酸化鉛に変化させ健康に悪影響を与える可能性は指摘されてきたものの、塩素だけでは酸化過程の速度を説明できなかった。

アメリカのワシントン大学の研究チームによれば、酸化過程の加速の要因としてマンガンが挙げられるという。

https://www.sciencedaily.com/releases/2019/07/190722115933.htm

選挙のとき・・・

To be attached to the subdivision, to love the little platoons we belong to in society, is the first principle of public affections.

選挙のときだからこそ、バークのいうLittle platoonsになぞらえ、私と公の関係を考える。

沖縄の長寿の秘密

BBCのデビッド・ロブソン氏が面白い記事を書いていました。

炭水化物が沖縄人の長寿の秘密か、というタイトルです。

世界中でローカーボダイエットが流行しているけれど、健康長寿においては実は逆で、100歳超人口比率が高い沖縄の人たちがそれを説明しているという。
具体的には沖縄県民は炭水化物とタンパク質をおよそ10:1の比率でとっており、歴史的にもサツマイモ主体で野菜果物も豊富にとってきた食生活が長寿に大きな影響を与えたといいます。

農漁業による肉体活動量の多さ、孤独になることの少なさ、喫煙率の低さ、なども沖縄の方々の長寿の要素に挙げていますが、最大要因としてロブソン氏は前段の食生活を指摘しています。

水広場的に補足するとしたら、やはり「水」。沖縄県は石灰質の地域が多く、場所にもよりますが天然水に含まれるカルシウムは比較的多めです。カルシウムが不足する生活を送ると血管につまりができやすくなることは藤田紘一郎氏の著書にもある「カルシウムパラドックス」のみならず世界的にも指摘されていますが、そうであるならば沖縄の中硬水が血管系疾患発症リスクを低水準にしている可能性があります。

例えば、「やんばる地域」の大宜味村(おおぎみそん)では、長寿の里と宣言されたとおり、多くの方が元気に長寿を謳歌しており、当地の水は中硬水です(下記画像例は硬度でいうと200mg/L超の中硬水ミネラルウォーター)。

イギリスの軟水硬水&Beyond

ここ数年イギリスでは硬水の欠点が指摘されることが多い。

水道管にスケールが溜まったり、シャワーで肌や髪にダメージを与えるという例が様々な媒体で紹介されています。

下図のとおり、イングランドは硬水優勢の土地柄、ウェ―ルズ、スコットランド、北アイルランドは柔らかめ。

一部メディアでは硬水の健康的価値、例えば血管系疾患予防のはたらきなどもしっかり指摘されており、軟水派一色でもないようです。

上記は一般的な水道水の例。

名水の世界においては、硬度は指標の一つにすぎません。

イングランドにはバクストンやヒルドンといった名水銘柄があり、ウェールズにはティナント、ハイランドには勿論ハイランドスプリング。これらは比較的最近のもの、もっと歴史のある正統派の名水も少なくありません。

名水を論じる際、硬軟だけで比較評論する愚は、それらの永い歴史が育んだ文化に触れたときに霧消することでしょう。(画像:aquacure)