伝説の泉との再会

久しぶりにニュージーランドのブルースプリングを訪問。

秋のブルースプリングも最高でした。

詳しくは名水めぐりセクションにて;https://www.mizuhiroba.jp/meisui/sp/newzealand2009.html

プレミアムウォーターサミット

今年もプレミアムウォーターサミットが開催されます。11月、場所はニューヨークにて。主催は僕の知人でもあるマイケル・マッチャ、彼は世界のプレミアム水のメーカーや販社達の招待を開始しました。

去年はバルセロナで一回目のサミットが開かれ、そこで南魚沼産の「円水」を紹介したところ、角のとれたそのソフトで繊細な口当たりは、デンマークのソムリエはじめ欧米10カ国超のプロ達に高い評価を得ました。

私達グローバルウォーター社(GW)の役割のひとつに、日本の水を世界に紹介し日本の自然や名水文化をPRすることがあります。4年前に水広場を開設した時から「名水めぐり」セクションは英語にして発信しており、外国の水ファンや業者からの書き込みも多数ありました。

今回は忙しい11月でもあり、当社はまだ参加予定をたてていませんが、もし関心のあるメーカーの方がおられましたら主催者にご紹介したいと思っています。勿論GWはお金を頂きません。先着50席で締め切るといっておりました。満席の場合はどうぞご容赦を。

体内水分:アクアポリン

細胞と水

人間のからだは約60兆個の細胞から成り立っているといわのだそうです。そのひとつひとつの細胞の内側と外側の水の流れ、というより水分子の受け渡しを行う特殊な孔のようなものがアメリカの学者により発見され、アクアポリン(まさに水と孔です)と名づけられたそうです。

アクアポリンは狭いところで3オングストロームというとてつもない細さといい、水分子の大きさはひとつあたり2.8オングストロームというから、いつもは水素結合で房のようにつながっている水分子がひとつづつちぎられるようなイメージでアクアポリンを通るということになります。

更なるクラスター関連の学術研究も待たれますが、非常に興味深いテーマです。

プロアスリートの水

昨日、ひさしぶりにギドさんと会って話しをする。都内のホテルにて。

ギド・ブッフバルトさんはドイツ代表時代の1990年にワールドカップを制し世界チャンピオンになった元サッカー選手。それから浦和レッズで活躍し監督としてJリーグも制したすごい人だ。そのW杯時にはあのマラドーナを封じ込め僕の中でも強烈に記憶に残っています。

彼が育った南ドイツで有名なミネラルウォーターを輸入することになり会ったのが最初、以後仕事関係のつきあいだけなのですが、その僕などにも気さくに接してくれるギドさんのおかげで、こちらも最近は緊張しなくなりました。それとは多分無関係で、僕は時々、特に本人以外の人と話すとき、彼をあたかも友人のように「ギド」と呼ぶときがあります。

とにかく、今後も日本サッカーとドイツとの架け橋としてますますの活躍が期待されているギドさん。プロサッカー選手も毎日飲んでいるという特別な水で健康のまま頑張ってもらいたいです。

以前、監督引退後に来日した際、彼から僕と当時4歳の息子が浦和レッズの試合観戦に招待される幸運に恵まれました。まだサッカーが分かっていない息子を脇に父親だけが盛り上がり終了。そしてギドさんと友人やレッズ関係者の方々と食事に誘われ、スタジアムのそばにあるブラジリアンレストランに入り、息子と末席に座り人生初めてのシュラスコを食べさせる。彼は幸運です。

普段は誰よりもよくしゃべる息子。しかしその日は静かでいい子なまま後半に入り、8時を過ぎたころには眠いせいか更に静かになり、そろそろ失礼しなければとギドさんはじめドイツ人の皆様にもペコペコして父親が席を立ちます。後ろからついてくる息子がなぜかギドさんの横にぴたっと止まり、まだ食事中の皿の隣でおもちゃをいじりだす。それをニッコリと見下ろす優しいギドさん。次の瞬間、ギドさんを見上げていきなり「ギドの鼻って、な~がいんだよね~」とやったものですから瞬時に日本人関係者の笑いが爆発しました。苦笑しながら僕に視線を移すギドさん。「困惑は勿論、ひょっとして怒っているのでは?」と、父親は冷や汗をかきながら「失礼なこと言ってすみません」とひたすらペコペコ、ひたすらあせる。下を見ると女性陣の大うけで大満足の息子に気づき、ひっぱり退散です。

「怒ってるんだろうな。だってあのとき対面に座っていて日本語も分かるエンゲルズさんが「そういう君は全然鼻が無いじゃないか」みたいなこと言ってたからな」、などと小心者の父親はその後も悩みます。しかし後日にその場にいた関係者から「ギドはそんなに小さい人じゃないですよ。心配無用です」と笑われ、ほっとしました。

確かにそのとおりでした。しかし、それ以後、少なくとも息子相手に彼のことを話すときは「ギドさん」と呼称するようにしています。   

ワイン&グルメフェア

コーカサスの長寿水とガリシアのタパス

昨日(4月24)までの3日間、東京ビッグサイトでワイン&グルメジャパン2009という展示会があり、ここ数年あえて展示会を避けてきたグローバルウォーター(GW)だけれど今回はあるドイツ関係者のご好意により出展。FOODEXとは一味違った来場者層で、今回は外食のプロの方の来場が多数あったと感じました。

まずはGWのブースから。今回はケルンメッセさん主催によりメイン商品はあのエンジンガー・スポルト。世界でも最も硬い水のひとつで、ホテルやレストランのプロ達の目に留まり試飲となる。NZの軟水(今回ブルースプリングを使用)とは1800度以上の硬度のレンジで計5種類の世界の名水をお試し頂き、「水の味わいや効用もいろいろあるもんだ」というような表情を見ると率直に嬉しいものです。

FOODEXはじめグルメフェアはアルコール飲料を目当てにする方が中心であり、つまり頬を赤くし、「なんだ水か。のど渇いたからちょっとくれ」という人が実に多いのだけれど、こちらも慣れてくると冷やかしをマタドールのごとくすっと流す術が身についている。酔ってしまったら水の味など判らない。そう、判らないはず、しかし、なんと今回はその赤ら顔の人たちでもハッキリと違いがわかる水が登場していたのです。

ジビエっぽいワイルドさ?野趣あふれるコーカサスの滋味

僕らの業界では世界の銘柄20選(などがあれば)に確実に入るであろうボルジョミ。コーカサス地方の天然炭酸水で、ミネラルや泡がとても濃い。カタルーニャのヴィチーカタランは濃いナトリウムによる塩っぽさで知られているけれど硬軟でいえば軟らかい水、ボルジョミは塩っぽさだけでなく硬く、泡が活気だち、天然水という言葉では到底表現が適わない、まさに大地のミラクルが生み出した天然の健康飲料水だ。カスピ海ヨーグルトや長寿村で知られるコーカサス地方の水、今の国境でいうとグルジア、旧ソ連で水といえばボルジョミといわれた有名な銘柄です。個人的にはジビエの野生味に通ずる動物的な生命力を持つ水だと思っています。試飲した大手卸の役員の方は「この味はミネラルウォーターというより清涼飲料水といわないと大変だ」、外食のプロの方々は揃えて「ん!これは好き嫌いが分かれる味。飲める人ははまってしまいそうな独特な水ですね」。よし、思ったよりこの味を分かる人が多いことが分かり、貴重な体験でした。

そのボルジョミ。2009年夏に日本初上陸します!



GWはボルジョミの販売者として卸・小売(水広場)を行います。どうぞお楽しみに(日記というよりPRっぽくなり失礼しました)。

 

 

 



ああタパス、タパス

フェア出会った一皿で忘れられないのがタパス。GWブースの対面に出展していたスペインのガリシア州政府のブースで味見をしました。ガリシアとはポルトガルの北部にあり大西洋に接する、スペインの北西端の地方。

以前出張先のバルセロナで試して虜になったタパス バールなんかの小皿料理をまとめてタパスというのだろう、 そんなアバウトな理解でも居酒屋好きの僕には十分惹きつけられていたのですが、今回のフェアで、タパスにもたくさんの種類があることに気づかされ、その奥深さに少し触れた気分になった出会いがありました。



糸昆布のような海藻らしき中身をトマトベースの少し甘辛いソースに漬け込んで柔らかくなったパプリカで包んである。 口に入れると海っぽい感じが広がり、多分ガリシアの大西洋でとれた昆布の種類だろうなと思い、出してくれたガリシアの方に聞いたら、「ウナギの稚魚」。この写真にあるひょろひょろしたのがそれです。ウナギは嫌いではないけれど、その稚魚が一杯詰まったのにがぶりついたのは初めての経験、飲み込んだものが食道の先のほうから少し戻ってくる感覚を覚えました。冷静を装い、「なるほど。タパスにもいろいろあるのですね」と優等生発言をすると、「東西南北それぞれ1300kmあるスペイン、タパスといってもバラエティ豊かですね」と熱心にいろいろとレクチャーしてもらう。そうでしょう、わざわざ日本に仕事に来ているのだから真剣で当たり前。とにかく、これを含め、ガリシア産のワインと合うタパスがたくさんあって嬉しかった次第。白ワインが特に良かった。どなたか輸入して頂ければ有難いのですが。。

その翌日、同じブースにいた日本人スタッフの方と歓談していたら、ウナギの稚魚は実はウナギもどきなのだという説明を受ける。連日の驚き。日本でいうカニカマのようなものらしい。でも良くできていた。今度幸運に恵まれたらガリシアで食べてみたいものです。

誰もが気になるイチロー選手

WBCにおけるイチロー選手は千両役者でした。決勝戦の決勝打はまさに感謝感激、僕の記憶に永遠に刻まれることでしょう。イタリアなども含めた全出場チームが競い、完全といえるクライマックスが待っていた決勝の今大会のDVDをMLBは自分たちの為にも世界中に宣伝すべきです。

イチローが気になったついでにと、週末にMLBのHPやアメリカの新聞などを中心にいろいろと見ていくうち、昨年中にマリナーズのメンバーがイチロー選手は自己中心的でチームの勝利を優先していないと批判した記事を発見。「何だと?」、ジェラシーが背景にあるとの観測もあったけれど、キューバのカストロ前議長も世界一と認めた僕らのイチローだからこちらは穏やかでない。

往年の名選手が引退し、クラブハウスにおいてもリーダーシップを取れるのは実績からしてイチローだけといった部分もあるのかもしれない。しかしチームを優先していないという批判は間違っている。バスケットボールやサッカーなどでは自分勝手なプレーがチームの勝利に害を及ぼすことはよくある。パスすべきところをドリブルや無理なシュートで自滅というのが典型的なパターンでしょう。

しかし野球の構造は全然違い、各自の好成績とチームのそれとの関連はかなり高いはず、前者がトータルで他チームを上回れば、打順や戦術のヘマが無い限り絶対勝てている(と、素人の僕は思う)。昨シーズンも開始当初は監督が「イチローには走らせる」としてイチロー選手はそれに従い前年より盗塁を敢行していたと記憶しています。マリナーズが勝てなかったのはイチロー以外の選手の個人成績をまず検証すべきで、そしてかりに低調成績の原因にチームの暗い雰囲気がもしあったとしてもそれは監督はじめ管理サイドの責任範囲でしょう。皆を引っ張るリーダー的存在の選手がいるチームがあったとしても、それはあくまでたまたまのプラスアルファ要素であり、数億円ないしそれ以上もらっているプロ中のプロ達がリーダー云々を言い訳にするのは誰が見ても筋違いと思います。僕らのヒーローにとってこんな下らないことが支障にならないよう、マリナーズのワカマツ監督の指導力を期待します。

次回のWBCを日本で共催する提案など、今後MLBと対等に伍していくためには政治力が必要です。政治力には相手の思考パターンを熟知することが求められるでしょうが、Billy Beaneのマネーボールにもあるとおり、MLBのチーム戦略の特徴のひとつに、徹底した統計手法に基づく科学的なベースボールというのがあるようです。僕も熟読しましたが、そこでは打率、打点、本塁打という3カテゴリーだけでなく、というよりもそのどれより大切ともいえるのが出塁率という発想があります。また、本塁打と打点でイチロー選手を上回るメジャーリーガーは多数いることは周知と思いますが、打率と出塁率ではイチローがトップだろうと僕も高をくくっていました。実はその4カテゴリー全てにおいて現役を通しイチロー選手を上回るとてつもない選手がいたのです。カージナルズのプホルズですが、2001年のMLBデビューから2008年までの通算打率.334、出塁率.425、打点977、本塁打319本、その全てがイチロー選手を上回る。そんなことも知りながら交渉を進めることが必要でしょう。しかしプホルズ選手について言えば、僕は総合的にイチロー選手が上だと思っています。なぜなら、結局ステロイド頼みになるパワーベースボールでしかなかったMLBのフィールドに新たな次元を創り出した功績、そしてWBCで証明されたとおり、記録だけでなく、前述国リーダーのみならず世界中の少年達の記憶に鮮明に刻まれ尊敬されるプレーヤーであるから。統計だけが栄光をつくるわけでなく、仮に統計を見るとしてもイチローが気になる人口規模の統計をとれば他選手の比でないと思うのですが。

日本がMLBと互角にやっていけるよう、統計的思考や商業上のバジェット面など相手側が出すであろうカードを正確に予想した上で、日本全体が野球に持つ情熱や子供も含めたプレーヤー人口(数字か)などを含めた3次元のコミュニケーションでもって交渉していってもらいたいと、勝手ながら期待しています。

by Horiuchi 

エルセンハム

システムダウン?

ブログのシステムが原因不明でダウン、2008年12月からアップデートされていない状態が続いておりました。システム不具合という書き手的には正当な理由で日記をサボっていました。その間に手書きでメモしたものもあることはあるのですが、追ってアップしていきます。

エルセンハム

2月に訪問したイングランドの水源、エルセンハム。高級ホテルやレストランで「プレミアムウォーター」として位置づけられるブランド達の中で最も評判の良い銘柄の一つ、世界のプレミアムウォーターの中で恐らく最も値が張るブランドである。

稀有な地質構造に湛えられた地下水脈や、どこか(いつかテレビで見た)ランボルギーニの工房を思わせる少数の名人達によるハンドメイドもとても貴重で特筆ものなのですが、この水を発見しただけでなく、それを高貴ともいえるブランドに昇華させた英国紳士、マイケル・ジョンストンの起業家精神がとても印象に残った次第です。

水源ツアーのサマリーは下記、水源めぐりのセクションにて。

https://www.mizuhiroba.jp/meisui/sp/elsenham.html

ウォーターダイエット

この1ヶ月で体重を7%落としました。

生命保険に入り直す必要があったので調べてみると、今時の保険はいろいろ細分化されており、健康状態で保険料率が変わるものがあるという。もともと保障と貯蓄を分ける考えの僕は掛捨てに絞っているものの、それでも死亡保障の一般的な料率というのは結構な水準、生命表でいう平均寿命(男で78ぐらいでしたか)の中間地点を過ぎて3年以上経った僕ゆえにそれは当然なのでしょう。

ある保険会社のシステムでは健康状態によって被保険者を4段階にわけ、最優良のクラスだとプレミアムが5割近く安くなる。そうなればダントツで国内最安値だ。よし、そのファーストクラスという名前の最優良にチャレンジしてみよう。さっそく説明を聞くと、非喫煙者、体格、血圧、遺伝的要素、職業などの条件があるらしい。それならば仕事柄いろいろ手に入る「水」を飲みダイエットして挑んでみよう。健康診断まで1ヶ月。

その日からエンジンガー、国内の温泉水各種、ボルセックなど、1日にミネラルウォーターだけで3L、検査日まで飲み続けた。おしっこの頻度も当然増え、体内のアクア・サーキュレーション(?水の代謝とでもいいましょうか)が速まったように感じる。夜のお酒の誘惑と食欲には勝てなかったけれど、朝食は極力控えめにして昼はりんご1個というダイエット。これまでごはんを食べ過ぎてきた反省もあり、白米はとりあえずストップ。そして水と食生活だけで痩せるほど脂肪は甘くないだろうということで、夜明け前の小石川植物園の周りを散歩したりジョグしたりで有酸素運動、発汗しやすい状態をキープ。子供を保育園に送った後もいつものバスでなく徒歩で会社に。最初に気付いた点は便質が変わったこと(ごめんなさい)、そして徐々に軽くなってきている(気がする体重、といいますか自宅に体重計が無いので正確には不明です)。

検査の日取りが決まり、保険会社のセールスの方が繰り返し2,3日前からお酒は控えて水を飲むようとのアドバイス。きっといい人なのだろう、アメリカの本社が国有化される事態になって大変であろうに。後者はご心配無用、一日3L飲んできてます。

さて検査当日、会社のそばのクリニックに定刻に到着。名前を呼ばれ入ると身長・体重・胸囲・胴囲を計測。まず身長というので靴下とろうとしたらそのままでいいというので171。ざっくり170と書かれる。体重というので上着とズボン脱ごうとしたら引くからいいというので68.5、ざっくり68(あれ、この前どこかの銭湯で測った時は73超えてたから、5キロ以上落ちている)。胸囲・胴囲で長袖脱ごうとしたら引くからそのままというので97と83(あれ?引かないでそのまま書いてる)。尿は少しだけでよいと2回言われたが、まあそうおっしゃらずにとばかりに紙コップに半分ほどで置く。

ここまでは非常にレイドバック・リラックスというか軽く適当(?)といった看護婦さんの姿勢がニコチン検査になると一変、アメで充分に唾液を出させた後に特殊な大型綿棒でもってこちらの口内の隅々までかき回す。完全禁煙して3年になるというのに、看護婦さんの真剣な眼差しは、あわよくば喫煙癖をごまかそうとしている不届きモノをワタシは決して見逃さないと言っているようにみえる。多分僕は善人の雰囲気を備えていない。

血圧になり、上着の袖をめくろうとしたらその上から巻かれてパンピング、シューー。下が72で上が130。この前どこかで測ったときは80の125だった気がするけれど、今がよいのか悪いのか分からない。

問診ではおじいさんの先生が胸からお腹をみる。横になってくださいと指された先のベッドにはうず高く本が積まれ、残った半分ほどのスペースに足を曲げ斜めにようやくすべりこみ、わき腹をもまれる。そしてはい終了。

1週間後、せールスマンから電話。「結論から言いますと、ファーストクラスで引受可能です。」 やった。単純に嬉しい。

嬉しいんですが、保険料節約という実務的な理由が無いとダイエットできない自分に気付くと少し悲しい。

とりあえず今日これからその保険の契約です。

オーパ!

開高健の大ファンです。男として憧れている。(最初「タケシ」と知らず「カイコウ・ケン」と呼んでいた僕です)

オーパは僕らにとっては垂涎モノのアマゾン釣行記。写真満載につき冒険家開高健の実体験の目撃者になれるのです。(会社のそばにある千駄木の往来堂書店さんで見つけました。小さな本屋さんですがいろいろなジャンルでこちらが読みたい本が不思議に丁度良いタイミングで置いてあるのです) 



僕は「流亡記」を読んでから開高健にハマりだし、そこでは侵略統治という人類史の普遍的で遥かな縦糸のようなものをボーッと想像し、「輝ける闇」では極限で赤裸々に晒された生存本能に驚き(自身が命を賭けた従軍体験のフィクションともいえるらしく迫力充分だった)、「裸の王様」では大人社会というか形式的なものへの警告らしきメッセージに強く共感したことを覚えている。

どの作品でも文体というのか彼のスタイルが良かった。そして僕が知らない(ないし忘れた)単語(特に形容詞)が必ず出てくるので勉強になる。例えばある話のマスは剽悍と形容され、その単語はビビッドに描かれた淡水魚の鮮明なイメージと共に記憶に刻まれるといった具合。大らかで、とてつもない自然人といった雰囲気に終始していて、雲古なんていう単語もたまに出てくるが、それが何か?と言わんばかり堂々と自然に露出し汚さを感じない(ミネラルウォーターを販売する者が何というお下品な。大変失礼しました)。   

そしてオーパ。今から30年ほど前のプレイボーイ誌企画による60日間に及ぶアマゾン川釣行を記録したもの。オーパとはブラジルの人達が驚いたり喜んだりする時に発することばという。ワニもたいらげるピラーニャ、3mを超える世界最大の淡水魚ピラルク、黄金に輝くドラドといった怪魚達との真剣勝負。

同行したカメラマンの接写多数により、セミプロ級という師のキャスティングの様子や釣果の生中継に見入っている感覚がする。文を読むと僕のような凡人かつ実体験不足の人間の理解をこえる深度というか。手漕ボートの上で起すルアーアクションは独特の深い洞察や思想にリンクしているように思え、300kmを超えるという川幅にたたえられる世界の淡水の3分の2という水量の茶褐色は巨匠をどうインスパイアしたのだろうと夢想する。そしてアマゾン川の主はどれだけ巨大でどれだけ獰猛なのだろう。30年後の今は何が変わり何が変わっていないのだろう。僕が知っているのはせいぜい奄美のGTまでで(それも知っているだけで掛かったのはシイラ止まりで結局釣れたのはカツオだけだったけれど。。)巨匠の実体験より究極的に低いのです。比較自体不適切と認識しつつも悔しい。

途中で150kgの子牛を丸焼きにしたり、1.5Mのミミズをつまんだり、巨匠は存分に遊んでいるようにみえる。夢のようだ。やってみたい。   

巨匠はブラジルのミネラルウォーターについても触れていて、ガス無しを好んで飲んでいたことが分かる。水広場でも引用したくなる水のくだりがあったので参考にしたい。

コーマック??

水広場的BOOK論とかいうと偉そうに聞こえますが素人の単なる読書感想です。

今年初めて知った作家、コーマック・マッカーシー。 
占領軍最高司令官とスパイスのような面白い名前だ(それはマコーミックだ)、などとぼんやりしていたらアメリカ現代作家の重鎮であるという。 

最初に読んだのは「ザ・ロード」。タイトルそのままのロード小説だ。人類が破滅した未来に生き残った父と子がひたすら南に向かう。ショッピングカートを押して歩く彼ら。火を運んでいるというくだりが何度も出てくる。火とは何だ?希望?良心?命の縦糸?それとも?
人間が怪物化するグロテスクな世界が進行する中で人の心を決して失わない息子は天使の光を放ち、父は彼を守るためだけにいるかのようです。極限の状況における対比からは鮮明なイメージがつくり出され、その鮮度は落ちない。 

 
解説から作者は60歳を過ぎて息子を授かっていることが想像できる。
「絶対的に」愛しいもの。多分そういう作品なんだ、と思った。
映画も撮影されたらしく来年公開だ。

「全ての美しい馬」
「ザ・ロード」1冊でコーマック・マッカーシーに惚れてしまった。大げさには熱を伴うインファチュエーション。調べると前からたくさん書かれている。その中から面白そうなものを選ぶ。All the pretty horses. これにしよう。

邦題を検索すると直訳のようで「全ての美しい馬」。英語版を早速買いこみ、ロードものらしきあら筋に期待が高まる。

テキサスの16歳の主人公が友人と馬に乗ってメキシカン・ボーダーを越えていく話。
前半は辞書なしではしんどい。カーボーイ用語が多発され、まあ当たり前なんだろうけど国境を越えるとスペイン語が乱入してくる。

そのうちに著者独特の潔い言い回しが快適になってくる。描写は過去形と現在形にきっぱり分かれ進行形は少ないように思われ、シンプルな動詞が多用される。食べた、唾をはいた、飲んだ、座った。主人公John Grady Coleがどれだけateし、spatし、drankしてsatしたことか。とても潔い感じ。そして大地との距離が限りなく近い。

後半では主人公が囚われの身になったり、俄然展開が早まる。少年といえる歳の主人公、細部では経験不足、でも男らしいハートと希望を持ち冒険し、大失敗、大失恋、暴力と正面から対峙する。そしていつも傍らには馬が寄り添っている。

アメリカ的青春。とにかく、ジョン・グレイディ・コールみたいなヤツが友達にいたら最高だ。