花王、お前もか・・

ミネラルウォーターや洗濯用洗剤は消費者物価指数で見ると見事な劣等生。前者はCPI項目にカウントされ出した2000年から2020年までにほぼ5割安となり、後者は1971年からの半世紀で価格はほとんど上がっていない。

今の消費者にとって有難い話、全体ではマイナス。何故なら低粗利>低賃金>結婚できず>少子化進行>社会保障システム崩壊またはその不安による消費投資低迷>デフレスパイラルというネガティブパスを日本経済まっしぐら、より多くの将来世代が不幸になるから。

どうすれば物価が普通の国のように上がれるのか? 典型的なデフレ業界に自身をズッポシと置いて18年、毎日自問している。

8月4日日経にあったが、最近の原材料高を価格に転嫁しきれない花王。洗濯洗剤業界は3社寡占、無数の零細が占める飲食料品製造の世界とは真逆にも関わらず花王も価格を上げられないらしい。GDP下げるよりシェアを下げる方が彼らにとってはマイナスなのだ。このように企業経営者がいかに「産業経営能力」が無いか示す例は枚挙にいとまない。MBAで教えることを今の日本で実践してもGDPは増えず、最大多数の幸福を実現できない。

先進国で日本だけが物価停滞、GDPも停滞という体たらくは過大な消費者余剰と過少な生産者余剰の歪さを是正しないとどうにもならない。

食品製造のようなフラングメントセクターに限らず洗濯洗剤のような統合セクターでも値段が上がらないのは、流通の川下とのパワーアンバランス、シェア優先経営、コーポレートガバナンス改革と株主重視経営、政策失敗(若者への過大な社会保険コスト、デフレ期の消費増税)等の要因が複合的に作用した結果だと思う。

日銀の金融緩和で物価が上がるほど日本経済は教科書通りでない事はこの9年ほどで証明された。

今の日本こそ企業経営者が産業経営を目指す好機はない。

今日も何台かのトラックが商品納入と出荷で当社倉庫に来る。ドライバー達は独身。話をすれば「結婚」という言葉は高給取りやエリートのものになってしまっている。飲料製造業界全体も似たもの。

現場も知らない無能官僚や御用学者にこのまま任せていたら日本は終わる。例えば東証プライムというなら最低平均年収800万円ぐらいの要件化が当然だと思うし、イオンやセブンはじめ大手小売り業者の飲料の買いたたきや囮廉売への規制強化も必要。他にもできる事は山ほどある。

もやもやnote・・需要って?

日頃のもやもやの正体探し。

デフレには2つの定義があり、一つ目は文字通り物価が下がっていく現象、もう一つはGDPギャップがマイナスであること。総合物価指数が2%超えても日銀が緩和継続する理由は後者を理解すればわかる。

そのGDPギャップ、今の日本経済は供給に対し需要が足りないという。公式統計として内閣府と日銀が別々のGDPギャップを発表しているが、ざっとおさらいしてみる。2つのグラフの上が内閣府から、下が日銀の公式データから僕が作成したもの。


全体の推移は似ているが違う点もあってコロナショックの2020年第2四半期は内閣府は-9.4%のところ日銀は-4.2%と実に倍以上の開きがある。


それぞれ優秀な方々が精緻にまとめた統計だと信じたとしても数字が2つあっては国の経営判断に困るはずだが、もやもやする。

いずれにせよ今回の話題はそこではない。需要の意味だ。グラフのとおり今はGDPギャップがマイナス、需要不足という事で、政府が需要を創出(カネを使う)する必要性が叫ばれ、それは間違いではないと思う。他方、需要と叫ぶ人達の多くが本当に需要の意味が分かっているのか疑問に感じるところ、それは需要=カネがあること、と誤解している部分。

個人金融資産が史上初めて2千兆円を超え、民間だってカネはあるのだ。(カネの偏りは枝の話、ここでは幹の話)需要とはカネ+カネを使う意欲であり、今の民間には後者が不足しているというのが事の本質だと思われる。そしてその主たる原因は年金など将来不安であることは定量的にも正しい事が検証されている。

つまり、本当の意味で需要をつくるとは、不安を解消することに他ならない。

ウクライナ、ドイツの水、日本。

ドイツのエンジンガーの社長と久しぶりにコンタクト。ウクライナ戦争のあおりを受けて資材調達が困難になっているとの事です。特に外箱等に使う段ボールが入らないと。

僕らとの17年の歴史もあってか、同社長は日本に強くコミットしてくれています。

ゲロルシュタイナーをはじめ、世界最大のナチュラルミネラルウォーター国であるドイツ産の複数の良水が日本向け輸出を終了しました。

他方、際立ったミネラル量とミネラルバランスを誇るエンジンガー・スポルト。日本で定期購入のお客様も多く、海運費用や円安も含め弊社のコスト自体2倍近く膨れ上がっていますが、何とか供給していきたいと思います。

水広場的 経済ばなし

水広場的経済論は賃金が主役です。理由1.日本で最も不幸せなのが(消費者としての我々に対しての)労働者としての我々だから、理由2.少子化緩和に最も効果的と思われるから。

改めて現状を確認し、解決の方向性を探る。まずは黒田日銀の金融緩和でどうなったか。貨幣は資産市場に向かい円安株高となり資産家と大企業を潤したが実物経済には回らずにCPI2%は緩和で達成できず、失業率は改善したが2009年からの改善トレンドが続いただけとも言える。(失業率について:日本の慣習・労働法制度下ではそもそも中央銀行がコントロール不可、すべきでもない。FRBの真似をする前提自体が間違い)

簡略的な図にするとこんな感じです。2022年のインフレはコストプッシュで金融緩和が起こしたものではありません。エコノミストと言われる人たちはセオリーを神格化してしまい日銀を過大評価しているが、実体経済への影響度は大してない事に気付いていない。

一方で足下の急な円安、金利1%上がっても元利コスト上昇は5兆円以下、政策金利をゼロコンマ%上げて急激な円安に少々対抗するぐらいの事はしてほしいと願うところです。


そのコストプッシュインフレ、川上から川下までちゃんと見ればいかに消費者が得をしているかが分かります。輸入品はじめとする総合的な一時原価上昇が凄まじい中、メーカー、卸、小売りの各段階でコスト増加分を川下に転嫁できていない。消費者が弱い市場であればGood News、労働者が貧している今これはTerrible phenomenon。粗利が減ってはただでさえ低い賃金上げようがなくなる。

100円輸入原価で小売価格200円の商品を仮定した単純な例は図のとおり。消費者としての我々は2%の上昇で騒ぐ前に、社会全体の公平性を熟慮しなければ。輸入原価上昇は外的要因ゆえどうしようもなく、短中期解は小売段階までコスト上昇を転嫁する(不当廉売ルール見直しを第一歩とし)、消費税を下げる、できれば両方を。


長期的な最大課題は少子化。賃金増がその解決、その理由を簡単な図にすればこの順序に。大げさにいえば不安解消のトリクルダウン、賦課方式で少子化が加速していれば普通の市民は不安を覚えて当たり前だ。社会保険制度の構造を創造的に改良することが急務、それが全ての根っこなのだから。若者世代への生前贈与を自由にし、純資産と預貯金が潤沢な資産家高齢者には年金を国家に贈与してもらい(さすがに無理か?)、国債は借換時にPerp(永久国債)に転換しながら、現代国家では国債という政府債務(国民債務ではない)が自然増になるのは当たり前である事を政府が説明すること。最後の点はすぐにできる。

センターの日常から

取引先ワイン輸入業者との会話から。

「景気どう?」

「5月は最高でした。高級ワインが特に売れました」

「それは良かったね。なぜ高級ワインなんでしょうか」

「飲む需要以外に値上がりを狙った動きだと思います」

今の物価上昇が1974年狂乱物価よりひどい理由

過去50年間の消費者物価、最も上がった年は1974年で前年比23%も増加した。

半世紀後の今、直近では生鮮食品除くコアCPIで約2%、エネルギーも除いたコアコアで1%弱だという。

一見すれば2%という水準は健全経済に、23%と比べれば至ってマシに見えるが、それは間違いだ。

1974年に物価は実質的に下がっていた、つまり1974年の賃金上昇率は物価上昇を上回り「購買力」は上がっていた。

2022年、実質賃金が下がり続けた中でのマイルドだろうが価格上昇は購買力を更に下げる。それは倍増した社会保険料や以前無かった消費税で端から大きなハンデを負わされている若者たちにのしかかり、結婚は遠い憧れとなり、少子化が更に進むことは容易に想像がつく。

生産労働人口は全人口のざっと7割、つまり日本が民主主義であれば幅を利かすべきは労働経済論、そのため現在は1974年の狂乱物価より酷い経済状況であることをポリシーメーカー達は承知する必要がある。

キーワードは勿論、賃金。

当職はずっと前から賃金が最重要と言ってきた。

賃金を上げるために不当な低価格は是正すべきだし、賃金を上げるために株主還元を減らし理想的には上場企業数の過半を非上場化すべきと考える。

公的資本主義実現には金融界を敵にする為、当初は度胸のある政治家が現れたと期待したが、その後の展開は想像外の悪手、インベスト・イン・キシダと国際資本に媚びた日には言葉を失った。

金融界とも仲良くしつつというのが現実であれば、NISA等の小細工でなく、例えば日銀所有のETFを一旦政府に移してから国内全世帯にロックアップ付ながら半値で売り出すぐらいの「国民株主化」というビジョンが何故出てこないのか不思議だ

賃金を上げるためまず政府がすべき事の例;

●不当廉売の定義見直し:生活用品や清涼飲料は囮廉売が跋扈しており、当該セクターの多くの製造者賃金は低いまま。廉売の評価基準を現在の仕入商品価格だけでなく諸費用を含めた実際ベースの原価に変更する。

●上場基準改訂:国際企業のお墨付けたるプライム市場はじめ、上場基準に最低平均年収を設ける。例として600万円なら4万5千ドル、先進国の新卒レベルしか払えないような会社が上場に値するとは思えない。平均給与600万円未満の上場企業はゴマンとあるが、日本の金融庁はそんな状態で恥ずかしくないのだろうか。

賃金を上げるために政府が中期的にすべき事;

●年金・健康保険制度の改良:小川一夫「日本経済の長期停滞」でも消費・投資停滞の主因が年金への不安である事が定量的に示された通り将来不安の払しょくが全ての前提。政府財務を家計のように語るメディアや貨幣プール論は根本的に間違いであり、ワグナーの経費膨張法則の通り、日本でも他国でも国際は償還期限が来れば大体が借換えられて残高は自然に増えている事実や自国通貨を自由に発行できるというEUには無い利点をまず理解し、最も堅牢なストラクチャーを再考、提示、将来年金も問題ないと国民を安心させる事がポリシーメーカーの仕事のはず。

サントリー値上げ、その2

当方の仕入先でもある某大手飲料メーカー担当者とのある日の会話。

サントリーさん値上げだってね。果たして小売実勢価格は上がるのかな?

弊社は大手小売店に直接納入してますが、当方が値上げをしても卸先のどこかの小売店が必ず一方的に値段を下げ、それを見た競合小売店の多くが一斉に「おかしいだろう、うちへの納価を下げよ」となって結局すぐに小売価格は元に下がる、これまで何度もこの繰り返しでした。

サントリー値上げ宣言!

サントリーが値上げを発表した。

繰り返し恐縮だが全体縮小均衡に陥った日本経済の最大問題は賃金が低いことであり、賃金を上げるには何はともあれ粗利を増やすこと、粗利を増やす真っ当かつ簡単な方法は最終消費者価格を適正水準に引き上げるに尽きる。

同じ品質のものを買うに日本ほど安い国はない。諸外国なら150円相当が当たり前のものが日本では100円で良品として買える。デフレ日本の消費者は強者、売り手は弱者、その仕入先は更に弱い立場にある。過当競争で極大化したこの消費者余剰のツケは労働者としての自分が払う羽目になっている事にやっと多くの人が気づき始めた。そう、日本経済復活の第一条件、消費者保護の最大化から労働者の稼ぎの最大化にシフトする事だ。

そうなってやっと若者にとって結婚という言葉が現実味を増す。結婚したいけど金ないからできない。結婚した世帯は子供もそれなりに産まれていて、つまり若者の低賃金は少子化の原因でもある。

今回のサントリーの値上げ発表が試金石になりえるか?2019年のコカコーラの値上げの際はほぼ全く飲料価格を上昇させなかった(囮廉売がひどかったミネラルウォーターの短期間だけの値上げを除くと飲料価格は上がらなかった、添付チャートCPI抜粋参照)。

政府要人に長期間アドバイスしてきた人間がトップに立つサントリー。当初は値上げに付き合う大手スーパー達も半年待たずに値をまた下げるようでは当該セクターの賃金が上がることも絶望的だ。政府に上から助言する前に、サントリーの社長には産業経営者として自らの業界で少しはまともな仕事をしてほしいと考えるのは国民感情として当然だろう。大いに期待しています。

CPIから何が見えてくるか

中央銀行による空前のマネー供給でも頑として上がらなかった日本の物価、ここに来て輸入原価高騰の一部が小売価格にも反映されているが部分転嫁に留まり、つまり付加価値は増えていないため賃金が上がるシナリオが見えてこない。

ここ数年の水広場は日本の賃金が上がる政策とは?を自問しているが、その中で、これまで半世紀の消費者物価の変化をいろんな角度から見ている。

物価を構成する財サービス品目グループの中から本件で重要と思われる25分類に関する2020年までの50年間の毎年の対前年変化を抽出、各グループの他グループとの関連性を分析した結果、他との関連が一番低い品目グループは「(公共)医療福祉サービス」、2番目に低いのは「石油製品」だった。後者は意外だが興味深い。

流通構造と値段についてどこまで迫れるか、物価と賃金についてどこまで説得力持てるか、株主資本主義との関連にも迫れるか、まだまだ序の口。

毘沙門水


地元の皆さんと一緒に秩父の奥座敷で湧く「毘沙門水」に足を運ぶ。

秩父は言わずと知れた石灰岩の名所、毘沙門水の位置する山の名も白石山(別名:毘沙門山)という。

カルシウム豊富でマグネシウムは控えめ。ph7.8、毎日でも飲みたい美味しくて健康的な天然水。

水源管理はそれなりに大変らしい。そのおかけでしっかりと水が守られている。