全国飲泉めぐり 9.釈迦の霊泉(群馬県利根郡奈女沢温泉)
治療や未病を目的に飲まれている温泉水。
今回の飲泉ツアーの最後のスポットは群馬県奈女沢(なめざわ)温泉にある「釈迦の霊泉」。重病を患う方々の療養や未病目的の鉱泉として全国で指折りの知名度をもつ。
東京から見ると谷川岳の手前の位置にあり、関越道の水上ICで降り、上牧温泉を経由して、細く長く紅葉に囲まれた山道を登り、やっと奈女沢渓谷上流の目的地にたどり着く。 椅子に座ってくつろいだり、お気に入りのオンラインカジノで遊んだりしながら、山の頂上でそよ風を浴びながら最高の時間を過ごしましょう。
病気治療や発病予防を目的に、全国から飲泉入浴客が集う「釈迦の霊泉」。その日は僕ら以外に10名以上の方が泊まりに来ていた。
お礼の手紙がたくさん
まず食堂に入った。片隅のテーブルに台帳がたくさん置いてあることに気付く。何だろうと表紙を見ると、肝臓病、血液病、神経痛など病気別にまとめられており(中には末期癌というタイトルも)、めくってみると宿泊客(=患者さん)からの礼状の写しが何十枚も重なっている。全部手書きだったと思うがすごい数だ。
アルカリ性低張性冷鉱泉
泉質で分類すると釈迦の霊泉はアルカリ性低張性冷鉱泉になる。無色透明で無臭、冷たくても熱くても飲みやすい。
入浴場では源泉を加熱しているけれど、冷たい源泉を引いた飲泉場が食堂にあり、宿泊客は自由に飲むことができる。
今回の飲泉ツアーで試した温泉水のうち最もアルカリ度が高いpH9.7。人気のある九州の某温泉水のウリはアルカリ性であることだけれど、アルカリ性であれば全て健康に良いといえるわけではなく、その水を構成する全てのものが全体として摂取時の体調に体調に対して何らかの作用を及ぼしている。空気、食事、ストレス、運動、年齢、精神状態、無数の要素が複合的に健康状態に影響を与えているので、極端に何かに偏っていると思われる状態でない限り、特定要素と治療(未病)効果との因果関係を云々する内容は非常に脆いと思われる。カルシウムが骨をつくるという種類の話とはそこが違う。従ってこの水の効用は、既に表記されている含有成分やpHといった特性はもちろん、界面活性力(不要な油・毒素などとも混ざり体外に運べる)やSOD(悪性活性酸素を退治するという)、分子サイズなどの有効パワーの可能性も否定できないし、実例にもとづく精神面への影響なども考えられ、できるだけ多くの次元で捉えることが重要になってくる。
古くから知られた薬水
昭和26年に県職員が訪れ温泉の許可をとるよう薦めたという説明書き。その後温泉設備が整えられ、現在は霊水をボトリングしたミネラルウォーターも購入可能となっている。
泉質概要
源泉温度:22.2度、pH値:9.7、蒸発残留物:0.11g/kg、成分総計:0.13g/kg、陽イオン:30.4mg/L、陰イオン:48.4mg/L、メタけい酸:51mg/L。
宿泊棟
全国飲泉めぐり 8.杣(そま)温泉(秋田県北秋田市)
マタギのおじさんに会えるアルカリ源泉の宿
この宿のご主人、杣(そま)さんはマタギ。水広場を代表する立場としては療養効果抜群というアルカリ性源泉の体験取材が第一目的、それは当然なのですが、初めて目にするマタギという存在が気になって仕方がなかった往路です。
秋田県北部、ブナ原生林で知られる森吉山にぽつっとたたずむ一軒宿に午後3時頃到着。地図で鳥瞰すれば白神山地の南麓であることがわかる。引き戸を開け、奥で夕食を準備している女将さんに「ごめんくださ~い」と一言。これってきりたんぽ?と嬉しくなる醤油系のあったかい香りと一緒にお母さん、でなく女将さんが現れた。
11月はまだマタギのシーズン前だ。少し残念な気もしたが、おかげでマタギのご主人にたっぷり話が聞けたのは幸いだった。
春夏は登山、秋は渓流釣りと紅葉、冬はマタギ料理と、一年を通じバラエティ豊かなに楽しませてくれるのが杣温泉だ。一軒宿には野生動物の剥製や猿の腰掛が鎮座し巨大岩魚の魚拓が何枚も飾られている。廊下の写真にはご主人が熊を狙う図の写真が。
宿のすぐ脇を流れる渓流では連れの林君が早速岩魚を発見した。僕はしばし飲泉視察を忘れ祖父と父親のきじ猟についていった小学生の頃の高揚感を覚える。普通の中年オヤジが急にニヤけた姿はハタから見て気持ち悪かったろう。
本題の水。この温泉宿では2種類の水(湯)が楽しめる。温泉水のほうはpH8.5のアルカリ性で泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉で泉温は54℃、無色透明で無臭。温泉成分表からはマグネシウムやカリウムの数値は分からなかったが、1キロあたり溶存物質が1gを超えるというこの療養源泉、陽イオン陰イオンの各種ミネラルがバランス良く構成されているようにみえる。
そして内湯に入り源泉を飲む。「美味しい温泉水だ」というのが最初の印象。pH1.2の強酸性含鉄泉の後という順番を差し引いても多分美味しい。ついごくごく飲んでしまう。
飲用の適応症としては慢性消化器病、慢性便秘、慢性胆のう炎、胆石症、肥満症、糖尿病、通風とある。お酒を欠かさないというマタギのおとうさんもこの水で血糖値を下げたということだ。この温泉水を採水しにわざわざ盛岡や秋田市などからポリタンクを持ってやってくる人もいる。
もうひとつの名水は宿の前の飲泉場で飲める冷泉。これがまたうまいのです。炊飯やお茶やコーヒー、そしてスコッチウィスキーにも試したくなる清冽な味わいだ。
茗荷宿?お気に入りの落語に茗荷(みょうが)宿という話がある。茗荷を食べ過ぎると物忘れするという諺を使ったドタバタ劇っぽい展開と欲張りが損するオチ。僕らは茗荷宿の客とは違って宿代を払うことは忘れなかった。一方、コートとジャケットを宿に忘れてきた。茗荷ではないけれど、清流育ちで泥臭さが全然ない鯉の洗い(普段僕は鯉を食べられません)ときりたんぽが美味しすぎた?(単に僕がおっちょこちょいなだけです)。
別世界を満喫させて頂き、有難うございました。
全国飲泉めぐり 7.玉川温泉(秋田県仙北市)
全国飲泉めぐり 6.国見温泉(岩手県雫石町)
緑色に輝く硫黄泉とその隣で湧く冷泉
早池峰霊水への訪問を終え、今日の最後の目的地である国見温泉に向かう。秋田県境に近く、秋田駒ケ岳をはじめとする名峰が連なり多くの登山家たちに愛される山岳地帯に湧き出る秘湯だ。登山客にとっては五合目のあたりで丁度よいという。あの田沢湖も近いところにある。
途中に小岩井農場があった。予定に無かったけれど立ち寄った。搾り立てミルクを温めてもらって飲む。胃のあたりに少し優しい味を覚える。ここ数日、栃木・福島・岩手の3県で強酸性から高アルカリまで異質の温泉水を次から次へと迎えている胃腸。
そしてしばらく走ると山道になり雨足も強く、暗くなってきた。雨の中、国見温泉峡となり今回の目標である石塚旅館さんに到着する。
国見温泉 石塚旅館
家族ぐるみで迎えてくれた石塚旅館さん。専務の石塚さんに旅館と源泉の特徴を丁寧に分かりやすくレクチャーしてもらった。国見温泉石塚旅館は3点で表せるという。
・緑色の温泉であること
・駒ケ岳の天然水が飲めること
・自家発電の不便な宿であること
仕事として僕は最初の2点にそそられる。3点目は宿泊客としてくすぐられた。自家発電もそうだし冬はそもそも営業できない環境にある特別な秘湯なのである。
源泉がなぜ緑色に見えるのか?
多硫化イオンの生成(黄)と炭酸カルシウム及び硫黄の微粒子による光の散乱の2つの機構が重なって緑に見えるとのことである。実験でも黄色い多硫化イオン溶液にCaCO3(炭酸カルシウム)を加えて振ると黄緑色になったという。
泉質は含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩泉。pHは7.1、1kgあたりの溶存物質は4gを超えるという濃厚な成分構成。胃潰瘍などの消化器病や慢性すい炎など、この温泉水を飲んで症状が緩和したという実例は多いという。石塚旅館に宿泊し、入浴とセットの飲泉が好ましいが、何らかの理由で宿泊ができないお客さんがポリタンクを送ってくることもある。
入浴中に飲泉した。思ったほど強い酸っぱさは感じない。どっしりとした渋さがある。強酸性タイプの源泉と比べると個人的には飲みやすいと感じる。
なぜ無色透明で清冽な駒ケ岳天然水も同じ宿で湧いているのか?
鷲倉温泉や早池峰霊水でも目の当たりにしたように、地上の想像を超える様相を呈する地下構造はよくある。硫黄を含み溶存成分が重厚な温泉水と全く違う軟水系でごくごく飲めてしまう冷泉が同じ敷地にある。断裂があるのかもしれないし想像は簡単だが調べなければ分からない。とにかく飲んでみるととても飲みやすくてさっぱり美味しい鉱泉水。コーヒーを淹れてもらったけれど非常に相性が良い。
国見温泉石塚旅館。夏にも近いうち訪問してみたい。
冷水をもつ水広場店長の林君。
全国飲泉めぐり 5.早池峰霊水(岩手県和賀郡)
全国飲泉めぐり 4.鷲倉温泉(福島市土湯温泉町鷲倉山)
まずは立ち寄り、五色沼。
中ノ沢温泉を発ち次の目的は鷲倉温泉。その前に途中の五色沼に寄る。11月初旬、約300という湖沼群が点在する裏磐梯高原は紅葉の真っ只中。五色沼はそこで名の知れた観光地、その日も大型バスが連なった。今回の飲泉視察とは無関係の立ち寄りだが、小サイトにある「名水めぐり」セクションで紹介するには十二分の規模だ。強風と低温に悩まされ毘沙門沼のみ訪ねた。五色沼とは磐梯山の北側山麓の湖沼群の桧原湖、小野川湖、秋元湖に挟まれた大小40程の湖沼群の総称だそうだ。「こきひ」というのか落ち着いた赤、ゴールデンイエロー、カーキ色やモスグリーンとそれらに囲まれた透明感ある湖沼です。
五色水
五色水と女神の泉というブランドのミネラルウォーターをボトリングしているのが五色フーズさん。五色沼エリアが所在地なのでぶらりと立ち寄らせてもらった。周辺の自然は開放感あふれたとても気持ちのよいところ。原水は大変貴重とのこと、滅多にとれるものではないのだろう。
鷲倉温泉 標高1200mで湧く酸性・含鉄の薬湯
周囲を吾妻連峰に守られた標高1200mの高原で湧く鷲倉温泉の源泉は二つあり、ひとつは隣接の位置にあって山腹から硫黄まじりの水蒸気が豪快に噴出す野地温泉と同じ乳白色の単純硫黄温泉。我々の目的はもうひとつのほう、それは酸性・含鉄-アルミニウム-硫酸塩温泉という泉質。pH2.7なので飲泉場で飲む源泉はかなり酸っぱい。源泉自体は無色無臭だが、強い酸度と含有鉄分のせいだろう、風呂場の岩場は赤茶けている。昔はこの温泉水が煮沸され薬として使われたという。
飲泉を済ませた我々がロビーで一息ついていた時、飲泉のうわさを聞いて源泉を買いに来た方がいた。客が現地で過ごす時間を大事にするというポリシーか、宿泊と飲泉はセットであって、ここは公共飲泉場ではないし、その温泉水は宿泊客だけが飲泉できる特権がある。ただし物理的な理由でこの名湯に来れない場合は、源泉を運んでボトリングしたミネラルウォーターを注文することができる(僕らのお客様のリクエストもそれである)。
硬度でいうと150程だが、鉄や硫酸塩(サルフェートともいわれる)など、単一軸では計りきれない効能があるのであろう。慢性消化器病に効果を発し、血圧を下げ糖尿病に効いたという実例が多くあるようだ。
水広場責任者の林君。
全国飲泉めぐり 3.中の沢温泉(福島県耶麻郡猪苗代町)
渓流の脇で飲む強酸性の湯
栃木県で2箇所の飲泉スポットを訪問した後、福島県に入った。最初は猪苗代町の中ノ沢温泉。湯治の記録は元禄時代まで遡るといわれる源泉地だ。
高速から国道115号線に入り、磐梯山を左に望み進む。黄葉中心に囲まれたパノラマ、空間が急に明るくなる。脇を流れる川岩が赤茶けている。酸性、鉄、といった泉質の想像が始まる。
中ノ沢温泉と源泉の沼尻山は6kmほど離れている。そこから湯を引いているのだ。
中の沢温泉に着き、宿泊先の西村屋さんにチェックイン、早速飲泉場でもある露天風呂に入る。渓流の脇に位置するそれは秘湯という表現がぴったりくる。
湯を少しだけ口に含む。構えてはいたけれど、強烈な酸っぱさに襲われる。
飲む時は充分に薄めなければならないだろう。pHが1.85というのだから。
その晩、宿の西村さんに話を伺った。
中ノ沢温泉では明治時代から同じ源泉の温泉水を使っているという。明治の頃の引湯は松ノ木をくりぬき6kmをつなぎあわせ中ノ沢まで引いたのだといい、当時の写真も旅館に残っていた。その源泉の泉質は酸性・含鉄-カルシウム・アルミニウム-硫酸塩・塩化物泉で、キロあたりの溶存物質が2gを超えるという。傷の殺菌から糖尿病まで、入浴と飲用のいずれかの効能があった例は多数にのぼる。この旅館で採水できるもうひとつの源泉(冷泉)は温泉水とは全く異なるもので、無色で大変飲みやすいものだった。
温泉水の効能
この温泉水、ミネラルウォーター的にミネラルリッチという単純表現で片付けられてしまう危うさ。ミネラルウォーターとして分類されている商品の原水種類には鉱水、鉱泉水、井戸水、湧水などがあるが、温泉水はそれらと根本的に違う。pH値以外にも特定成分が桁はずれに多く含まれているなどで現代の業法上は商品化不可能なものが多い。
僕らは日頃ミネラルウォーターなり飲料水を含有ミネラル量とpHで分類するクセがある。その点は温泉成分表記も類似している。ただし、成分がどうSODや界面活性力などに関連し、更にそれらがどう健康効能に関連するのか、明らかな科学的根拠はまだ無いといっていい。その一方で飲泉と関連していると思わざるを得ない治癒例が多々ある。すなわち、僕らはそのような例とできるだけ多く接していくことである。
達沢不動滝
NHK大河ドラマ「風林火山」のテーマの背景で写っていた巨大な滝。それは達沢不動滝といい、そこは中ノ沢温泉の隣山にある。飲泉というより水広場の「名水めぐり」の素材として(ついでに)取材した。壮大なるマイナスイオン(?)を感じたのは気のせい?
全国飲泉めぐり 2.与一温泉(栃木県大田原市)
アトピーに効くという、飲みやすいアルカリ性単純泉。
(左)本館の前で。小職。
東北道矢板ICから20分程で本日の目的地である与一温泉に到着。
源平の合戦で那須与一が願をかけたという温泉神社、その例大祭にあたる日に湧き出したのがこの与一温泉ということだ。アトピーに悩む方々が遠方から訪れることで知られる。突然訪れた我々を暖かく迎えてくださった女将さんと息子さん。いろいろなお話を伺うことができました。
アトピー治療への二人三脚
泉質はアルカリ性単純泉。昭和53年の法改正以降、カルシウム-硫酸塩泉といったように主な含有成分で泉質が表されるようになった。泉温が25度以上で1kg中の溶存物質が1000mg未満のものは「単純温泉」に分類され、その中でpH8.5以上のものをアルカリ性単純温泉というようだ。
一般的にアルカリ性単純温泉の適応症(効能)は入浴の場合で傷、神経痛、関節痛、慢性消化器病など、飲泉で軽い胃腸炎、通風など、といわれているが、アルカリ性単純温泉の中にも違いがあるだろう。その違いを探るのが今回の目的でもある。一方で禁忌症としてはこの温泉の場合は急性疾患や高度の貧血などがあるという。
アトピー治療で評判の高い与一温泉を訪れた過去のお客さんには、5年もの間入浴と飲泉に通い続けた結果お子さんのアトピーを完治させた親御さんもいらっしゃるという。
母親の愛情や責任感といったものを超える何かがありそうだ、5年間信じ続けられる何かが。ただ、他の例を伺うと大体が数ヶ月というスパンで症状が改善しているらしい。
遠路はるばる入浴と飲泉に訪れる方も多く、来れない時は温泉水を送ってもらう方も結構いらっしゃるとのこと。
なぜアトピーによいのか?
アトピーが治った実例が多数あることは確かに分かった。どう効くのだろう。女将さんのご好意で充分に堪能できた入浴と飲泉の最中に考えた。入浴で体を沈めたとたんにお湯が肌にまとわりつき、肌表面がつるつる、ぬるぬるする感じ。源泉を飲む。酸性泉や含鉄泉にあるような強い味のクセはなく結構飲みやすい無色透明の温泉水。
日頃の習慣通り、成分データをチェックする。
館内の成分掲示表によるとpH値はアルカリ性の9.06。泉温45.6℃(風呂は加水なしの源泉そのまま)。他の成分と比較して突出して成分は陽イオンではナトリウム(136mg/kg)、陰イオンでは炭酸水素(161.5)。遊離成分ではメタケイ酸(64)。
直接的に皮膚に関わっていそうなのはメタケイ酸で、64mg/kgという水準は比類無きというものではないが他成分との相対においてもしかしたら絶対値以上の効果を発揮しているのかもしれない。九州のとある温泉水はアルカリ性ゆえに還元力が高いということで人気がある。であればこの温泉水も還元だとか生活習慣病にもよいのかもしれない。また、表にはないがここの炭酸水素ナトリウムが皮脂や分泌物を落としてつるつるにしているという専門家もいる。
最後に女将さん自ら源泉採水場でお湯を注いで下さった。東京に戻ったらさっそく試してみよう。(写真は女将さんと水広場責任者の林君)。
全国飲泉めぐり 1.鶏頂山鉄鉱水(栃木県塩谷郡)
厳選された国内飲泉スポット:東北・北関東編
良い水を紹介する使命ゆえ、できる限り自分自身で水源に触れることが僕らの基本ポリシーだ。今回は水広場会員の皆様の中から当サイトでの販売希望として預かった飲泉スポットを中心に、東北・北関東地方から厳選された計10箇所を辿るツアーを敢行した。
今回は珍しく単独出張でなく、水広場責任者である林君と一緒の水源訪問である。訪問した源泉を一つずつ順番に書き留めたい。
飲泉について補足
浸かるのが主目的の日本に対しヨーロッパでは温泉といえば飲む健康法がより一般的だ。各スパ(テルメ)リゾートの鉱泉が持つ効能を飲んで活かす習慣が普及し、それらをボトリングした多くのミネラルウォーターも薬効が期待されている。有名なところではチェコのカルロヴィ・バリなどがある。街中の至る場所から温泉が噴出し、無数の飲泉所から自分の疾患にあった鉱泉(ほとんどが酸っぱく飲みづらい)をそのまま飲む。僕が現地を2005年に訪ねた時は世界中(特に中国)からの飲泉客が溢れていた。
実は日本でも明治の頃は多くの温泉水が薬水(薬湯)として販売されていたらしい。これら特徴ある天然薬効成分を持つ原水は万人の安全を想定する現在の日本の保健行政の枠に必ずしもあてはまるものではなくなり(?)、現在の行政の立場からすれば飲用を禁ずることはあっても薦めることは無いことは容易に理解できる。
そこで僕らとしては、古くからの膨大な母集団により効能の事実を確認した上で間違いないと思われる源泉を見極め、万人でなくそれらを真に必要とされる方々へ正確な事実を伝え何らかの橋渡しになれればと思っている。
1.鶏頂山鉄鉱水(栃木県塩谷郡) 傷と生活習慣病に
管理人の大塚さんと水広場責任者の林君(鶏頂山鉄鉱水販売所前にて)
明治27年に発見された薬水
今回のツアーの最初の目的地が鶏頂山鉄鉱水(けいちょうざんてっこうすい)の源泉。鬼怒川温泉の奥に連なる川治温泉から望む鶏頂山の麓で明治27年に発見された源泉からはpH2.5という酸度が強くて鉄分豊富な地下水が採れる。販売所で3代目の大塚さんに伺った話だと、当時は東京大学の薬学の教授が訪れ(下写真参照)、特徴豊かなこの水の効用を研究したという。
左が発見者の大塚氏。右に東京大学教授陣。
傷と血糖値
地元では切り傷の治療によく使用される水であるという。強い酸性を持ち含有物は鉄と硫酸に代表される濃厚な療養泉であるが、何らかの強い殺菌力が働いていることは間違いないようだ。
血糖値が下がったという多数の報告もある。その多くが毎日この水を飲用(コップに1,2杯)されている方々からの声だという。その他、貧血、慢性消化器系疾患、便秘などに効果があったという多数の実例が揃っていた。
実際に飲んでみると酸っぱく苦く渋い。美味しいといえるものではないが、朝晩1杯程度であればいける領域だ。
薬水
前述のとおり以前はその薬効から薬水として販売されていたという。当時を記録した各種資料が現存している。(下の写真は内務省による検査証原本より)
現在は入山禁止
以前はこの源泉での採水を目的にポリタンクを持った長い行列ができた。巨岩が並ぶ危険な地形構造のためその後入山は禁止され、現在は大塚さんによる限られた採水のみとなっており、それも体力を伴うので毎日というわけではない。この水を取り寄せる皆さんの願いを知っているから採水を続けるという大塚さん。非常に貴重な水であることは間違いない。
採水客で溢れた当時(上)。下は現在の源泉風景。
成分特徴
1.pH2.5の酸性。
2.鉄分:160mg/L。
3.硫酸(SO4):1133mg/L。 欧州的にはサルフェート。利尿効果などが見込まれる。
4.メタケイ酸(H2SiO3):182mg/L。記号からはシリカ(2酸化ケイ素,SiO2)に水が化合されているものとなるが、浸かれば肌の保湿効果があるという。英米研究機関のヒトの実験では飲むシリカは骨密度強化の効果があったという。
ミネラルウォーター体験レポート:水素水(4)
一応の統括。
水素入りミネラルウォーター(パウチ入り)を毎日200ml飲み2週間が過ぎた。このあたりで実験を一旦終え、開始前との違いを記録しよう。
血圧:変化なし(120-80)
体調:変化なし(実験前から既に好調)
疲労感・倦怠感:少し軽くなった気がする
睡眠:平均で長く深くなった
ストレス:変化なし
体感的な違い(ないし違いの無さ)を探っているので血圧以外の定量データは無い。
検体サンプルが健康体だったせいか(?)実験前後の変化は微妙に感じたものであり、それは睡眠でみられた。水素水がそれに直接影響を及ぼしたのか断定はできず、同時に悪玉の活性酸素なるものが水素水で減った可能性も否定できない。
健康に良い水を謳う商品は無数にあり、玉石混交。販売者である僕らはメーカーからの情報を自身で分析・咀嚼した上で正確な知識を伝える必要があり、お客様に薦める場合でも信頼に足ると判断した情報を選ぶ。今回使用した水素水は日本医科大学教授が客観的データから認めたもの、たった2週間だったが今回の実験で僕の体内で良い変化が起こったものと期待している。