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世界の名水紀行 ルルドの泉

 


 

水のプロによる調査報告! 世界一有名な泉の秘密とは?


世界で最も有名な泉のひとつ、ルルド(Lourdes)の泉。19世紀、村の少女ベルナデッタが(聖母マリアの導きで)見つけたという湧き水がその後に多くの大病患者の治癒をしたといわれることであまりにも有名です。
湧水が人々にスピリチュアルな感覚を喚起させるのは、それが命の源であるとすれば自然なことかもしれません。
しかしルルドが単なる寓話で終わらないのは、ルルドでその水の治癒力を目撃し奇跡的治癒を綴った紀行書を出版したのが、後にノーベル生理・医学賞を受賞したアレクシス・カレル博士であったこと、そしてカトリック教会が科学的に証明できないとしてこの水による多くの奇跡的治癒を認めたことからです。日本のミネラルウォーターでも「ルルドの泉と同じ成分」「ルルドの奇跡、ゲルマニウムウォーター」といった喧伝が後を絶たないのも、ルルドの泉がその類で世界で最も有名なことに端を発しているのです。

 

そのルルドの泉、本当のところどうなのか?治癒力のある水など存在するのでしょうか。飲料水の専門商社で世界中の1,000種類以上の水を知るグローバルウォーターは、2011年10月、調査のため改めて現地に飛びました。

 

 

石灰岩に磨かれた水

ルルドは南フランスのピレネー山脈の麓に位置しています。フランスにはマッシフ・セントラル(水源地の例:ボルヴィックのピュイ・ド・ドーム)、アルプス(エビアン)、ピレネー(ルション)の3山地があり、簡単に分類するとマッシフ・セントラルだけが火山帯(花崗岩質など)といえます。ボルヴィックが日本の水に近いのも火山岩でろ過されたものゆえ当然ですが、注意すべきはピレネー山脈が火山帯でないということ、つまり石灰岩質なのです。フランス北部やドイツなどでは平坦な地形による地下層の天然ろ過の長期化とその地下層が石灰岩質であることから、カルシウムとマグネシウムを豊富に吸収した超硬水(コントレックス、エンジンガーなど)が生まれますが、石灰岩質でもピレネーは急峻な山地であり、日本同様に降り注いだ雪や雨は比較的短期間で地下層を浸透していくため硬度はそれほど高くならないと予想していました。ルルドを訪ねてみると、泉のある聖堂より高い地点は広くなく、地下層でのろ過期間は数年から10年程度と想像しました。そして神聖なる源泉の洞窟を見れば、それは石灰岩。しかしその洞窟を見る限り石灰岩以外の岩層も見られ、その地下層が複雑であることを想像させるものでした。
ルルドの泉のある洞窟の上に建てられた聖堂 湧水のある洞窟前の広場と湧水を拝むための行列         

左画像:ルルドの泉のある洞窟の上に建てられた聖堂
右画像:湧水のある洞窟前の広場と湧水を拝むための行列

  


ルルドの泉の成分を調べてみました

ルルドの水を模した奇跡云々を謳った水の多くが、その水に含まれる「活性水素」が活性酸素を除去してDNAの損傷を防ぎ、アンチエイジング効果があるというもの。しかし活性水素なるものとその効果は科学的に認められておらず、よって水広場ではまずpHを計り、追加的にORP(酸化還元電位)を測定しました。

結果  ●pH値:8.55(20℃)  ●ORP:133(20℃) 


つまり、ルルドの泉はアルカリ性であり、比較的還元性(=酸化と反対という意味)の高いものであることがわかります。
湧水のある洞窟湧水のある洞窟
(両画像:湧水のある洞窟)

ミネラルなどの溶存固形物が多い場合はアルカリ性になりにくいのですが、ルルドの泉は強アルカリではないにしろ、しっかりアルカリ性でした。次に亜硝酸性窒素とカルシウム、マグネシウムを調べました。(自然変化を考慮してレンジで示す)

●亜硝酸態窒素:検出せず 
●カルシウム:45~50ppm ●マグネシウム:5~10ppm ●硬度:約130~170 


亜硝酸性窒素は水の汚染度(動物の糞尿によるものも含む)を示しますが全く反応しなかったのには驚きました。殺菌消毒なしの生水では普通ないことです。原水がきれいでありつつも、多数の取水者が持ち帰ることを鑑み、除菌しているのでしょう。


カルシウムとマグネシウムは日本の水よりリッチながらフランスの平均的な水より若干少なめといったところ。石灰岩質ながら、そこで磨かれる時間が比較的短いピレネーの特性が数値にも表れているようです。


ルルドの泉と同じゲルマニウム入り云々という健康商材がありますが、弊社の見解はゲルマニウムと健康効果の関係に科学的根拠は示されていないというものであり、今回も計測対象としていません。
湧水の洞窟の左側に設置された取水場には世界中から毎日数千人にものぼる人々が取水に訪れます
(画像:湧水の洞窟の左側に設置された取水場には世界中から毎日数千人にものぼる人々が取水に訪れます)


私が調査しました。(株)グローバルウォーター堀内 (日本地下水学会会員) 私が調査しました。
(株)グローバルウォーター堀内 (日本地下水学会会員)

まとめ: ルルドの泉はアルカリ性かつ石灰岩質の水

計測結果から導かれるルルドの泉質の特徴を短くまとめると、アルカリ性であること、そして石灰岩質の自然ろ過でカルシウムやマグネシウムを適度に含んだ水、となります。これは、水と健康に関する権威である東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎先生の60カ国以上での研究結果(アルカリ性の水はアンチエイジングと関連する、カルシウムを多く含む天然水は脳梗塞や心筋梗塞などを防ぐことがある、雪解け水の効用等)と整合するものとなっています。日本の水(特にミネラルウォーター)は火山岩質の地下水が多いため、同類の特性を持った水は、構造的・科学的にできにくいものといえます。
(藤田紘一郎先生の著書はこちら)


奇跡の水?

ルルドの水を飲んで病気が治ったという記録や言い伝えは多数存在しますが、ルルドの水による治癒なのか、あるいは他の要素が影響した中でたまたま水も飲んでいたのか、今となっては確かめる術がありません。

実際に調査して驚いたことは、カソリック信者以外にも大勢の人々がポリタンクやペットボトルを持って取水に訪れている事実です。つまり彼らは純粋にこの水の何らかの効用を期待しているということです。


ルルドの泉と日本のミネラルウォーターを比較すると?

ルルドの泉を日本のメジャーなミネラルウォーターと比較したのが下図です。日本の水は軟水(カルシウム少)で大体がpH中性であり、ルルドの泉とは性質が異なりますが、唯一の例外といえるのが、奥伊勢の洞窟で湧く硬水です。こちらは逆にルルドの泉と非常に近い水質であり、独特な構造の洞窟の石灰岩から生み出されて共通点があります。

ルルドの泉と日本の水との比較

 

 





 

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